フレッシュアンドブラッドTCG(通称FAB)をプレイし始めてから4ヶ月以上が経ちました。日本国内で興味を持ち始めているカードゲームプレイヤーも増えているようです。まだまだ初心者ですがFABに少しでも興味を持たれた方、これからFABを始めようか迷っている人などに向けて、個人的なFAB TCGの7つの魅力を紹介します。
フレッシュアンドブラッドTCGって?
フレッシュアンドブラッドTCGは、ニュージーランド発のファンタジー世界を舞台としたヒーロー対ヒーローの対面専用トレーディングカードゲームです。完全新規のIPで、デザイナーとしては無名のジェームスホワイト氏を中心にゲーム開発に7年かけたとのことで、第一弾のアルファエディションは2019年の十月に発売。つい最近発売3周年を迎えました。
ゲーム名は今では主流となったオンラインカードゲームを古き良き時代の対戦型カードゲームを思い出してプレイヤー同士が対面で「生身(Flesh and Blood)」でプレイするために根本からデザインしたゲームというところから生まれたそうです。
プレイヤーは、自分の分身となるヒーローを1体選び、先に相手のヒーローの体力をゼロにした方が勝ちとなります。ヒーローの行動はデッキから引いたカードとゲーム開始時から場に公開状態で設置する装備カードを使って行います。
初見でのFABに対する印象は、これまでプレイした複数のTCGやそれ以上の数読み込んできた他のTCGのゲームルールと比べると斬新さは感じませんでした。
しかし、実際にプレイしてみるとゲーム構造は細部にわたり作り込まれてれいて、プレイヤーのスキルとトレーディングカードにおける運の要素が絶妙なバランスであることが最初のゲームですぐに分かりました。
遊べるトレカ・無数の選択肢
FAB最大の魅力を一言で表すなら「遊べるトレカ」です。
TCGが遊べるのは当たり前に聞こえるかもしれませんが、他のTCGをプレイしていて幾度となく感じるのはデッキの種類によって、ゲーム中のプレイヤーとしての選択肢の数は意外と限られていて、各ターン手札のカードをプレイするか?しないか?の2択になることも多々あります。
これに比べて、FABでは使用するデッキの種類に関係なく、自分のターンはもちろん相手のターンでも毎ターン常に複数の選択が迫られます。このため、ゲームを遊んでいるという実感が湧きます。
このゲーム中の絶え間ない選択肢の豊富さを可能としているのはFABの根本的なゲーム構造にあります。
例えば、FABでは自分の各ターン終了時に手札をヒーローのインテレクト分まで補強するというルールで、ほぼ毎ターン各プレイヤーは4枚カードを引くことができます。
単純に各ターン基本1枚に手札に引く一般的なカードゲームルールと比較すると、これだけで毎ターン4倍の選択肢が増える感覚になります。
そして何よりも、FABでは大半のカードは、各カードは、プレイするか、相手の攻撃をブロックするのに使用するのか、それともカードの使用に必要なコストを払うために「ピッチ」するかの1枚で3つの役割を持っていて、この選択だけで各ターン自然と複数の選択肢が生まれています。
この二つの基本ゲーム構造の他にも、ヒーローの能力発動、装備品や武器の使用、さらにはリソースとして使用したカードがデッキの下に加わって再循環してくるカードのリサイクル構造が及ぼす先を見越した選択も必要となります。
まさに将棋などの戦略ゲームに近いものを感じます。
とにかく、フレッシュアンドブラッドでは毎ターン考えれば考えるほど最善の1手がわからなくなるほど、常に頭を使うことができます。4ヶ月程プレイしているわけですが、負けるのが当たり前のような勝率ですが、負けた理由は、運ではなく自分のプレイスキルやデッキ構築に問題があると素直に思えるので、自信を持って「負けても楽しい、本当の意味で遊べるトレカ」です。
誰にでもできる十人十色のプレイ
将棋などの対戦型戦略ボードゲームと比較したTCGの魅力を1つだけ挙げるとしたら、マジックの開発者であるマーク・ローズウォーター氏も発言したようにプレイするたびに変化するゲームバリアンスだと個人的には思っています。
特に、使用するデッキによって変化するプレイスタイルは、時には同じカードゲームをしているのに全く別のゲームをしている感覚を味わえるのが大きな魅力だと思います。
FABではプレイヤーの分身となる、ヒーローの選択は、デッキ内に含むことの出来るカードの制限につながります。
例えば、忍者クラスのヒーローを選んだ場合はデッキに含むことの出来るカードは忍者カードと、どのデッキにでも含むことのできる「一般カード」のみとなり、他のウィザードクラスのカードなどは含むことができません。
実はこのシステムには、過去の経験から偏見を持っていて、これまでプレイしたゲームでこのシステムを使用しているものはヒーローの選択でプレイスタイルが特定されるというよりも限定されるという印象を持っていました。
ただし、このシステムには大きな長所があって、それはカードのデザイン段階で開発者がカードプールを分けることができるので、意図的にヒーロー別のプレイスタイルを設定したり、デザイン的に偏った能力のカードを作ることができる環境を可能にしているところです。
FABでは、同じヒーローでもアグロアーキタイプから逆にコントロールアーキタイプでプレイするなどというこもできたり、クラスは同じでもヒーローを変えることで全く違うスタイルのプレイになったり。さらには、新セットごとに毎回、新たクラスやクラスと同様にカード分けに使われるタレントが追加され続けていて、マンネリ化することなく遊べています。実際、4ヶ月経った今でも、比較的プレイしやすい忍者クラスから初めて次のクラスに移行しようと思っていたのに、やっと最近別の忍者ヒーローを使い初めて、まだまだ楽しめているので他のクラスで遊ぶのはまだ先になりそうです。
初心者とカジュアルプレイヤーに優しいTCG
新しいTCGを始める時にはある程度の敷居がありますが、FABはいくつかの点で初心者にも優しいTCG設計になっています。
分かりやすい基本ルール
FABの基本ルールはとても分かりやすくなっています。個人の体験としてはポケモンカード収集以外はTCGのプレイ経験の全くない9歳の娘が最初はノロノロと30分以上かけてウェルカムデッキでプレイしましたが、2回目以降はは普通のペースでプレイできていました。
明白なルール
FABは競技TCGとして根本から設計されているので、曖昧なルール表記や複雑なカード効果はなるべく分かりやすく、明白にカードに記載されています。また、特殊な状況でのみ起こりうるルールの疑問に対応するために公式のウェブサイト各カードごとに追記説明文があります。それでも、まだわからないルールがあれば、Facebookなどで審判資格を持つプレイヤーなどに質問が可能で、TCG未経験者ですらしっかりと公式のルールに沿ったプレイができる環境が出来上がっています。
簡易構築環境
FABでは通常構築フォーマットに加えて、簡易フォーマットのブリッツというのが存在します。発表当初はカジュアルプレイを目的に作られたようですが、今では公式大会の一部でも使用されるフォーマットになり、1試合30分弱。そして何よりも、デッキ構築のルールは通常構築フォーマットと同じカードプールから、少ない枚数制限で行うので、カードが揃っていないカジュアルプレイヤーでも手が出しやすいようになっています。
制限されたカードプール
新規プレイヤーとして、既にいくつものセットが発売されているTCGに途中から参加する時に、個人的に1番悩まされるのがカードプールの多さです。
FABの場合は、選ぶヒーローによってデッキに含めるカードプール制限がかかるので自分のデッキ構築には意外とすんなり入れました。
例えば、約4ヶ月前からFABを始めた自分は現在最新のセット、アップライジングからの参戦となりましたがアップライジングで登場した新ヒーロー3体のうち、興味を引かれた忍者クラスのファイを使ってプレイすることを決めました。
ファイはこのセットから登場したドラコニックというタレント持ちの忍者クラスヒーローです。
よってファイをヒーローにしたデッキに含めるカードプールはドラコニックカード、忍者カード、ドラコニック忍者カードとどのデッキにでも使える一般カードの4種類。
実際にこれらのカード全てを合わせてみても、発売から3年経ったTCGなのに、ファイデッキが使えるカードは300枚を少し上回る程度のみ。
年間3セット
FABの生みの親であるホワイト氏は、プレイヤー達にメタ環境を存分に探求してほしいという理由から年間4セット以上は出さないと公言しています。実際のところは、今のところは4ヶ月に1回の年間3セットでカジュアルプレイヤーにとっては適度な期間と感じています。
スタン落ちなし
TCGの魅力の一つが、定期的に追加され続けるカード群で、ゲームを新鮮に保ち続けながら、いつまでも遊び続けられるという可能性です。ただ、常に新しいカードを買い続けないと公式な環境で遊べないとなると、経済的には他のゲームを買い続けているのと変わらなくなり、お財布には優しくありません。
この点から見ると、一度手に入れたカードがいつまでも使えるカードプールがローテイションしない「スタン落ち」なしのフォーマットは魅力的に感じられると思います。
同じクラスのヒーローを使い続けるプレイヤーなら新セット発売時に、そのクラスに関連するカードのみの購入を考えればよく、セットによっては新しいカードを一切購入せずにメタ環境に合わせて過去に手に入れたカードでヒーローデッキの組み替えも可能です。
「スタン落ちなし」と聞くと、競技レベルでのメタに不安を感じる人もいるかもしれませんが、これ関してはFABは公式の大会である一定の成績を収めた続けてポイントが貯まったヒーローは殿堂入りするというシステムを設けています。
殿堂入りしたヒーローと稀にそのヒーローに関連づけられた武器は、公式大会の環境では使用できなくなりますが、それ以外のカードや装備品は全て使用し続けることができます。
殿堂入りしたヒーローの代わりのヒーローは今後も追加されて続けていく予定で、これまで使用していたヒーローが殿堂入りしたとても、同クラスの別のヒーローに切り替えて、それまで集めたカードを使って違うプレイスタイルのデッキを構築することができます。
このシステムで現在のところ数体のヒーローが殿堂入りを果たしていますが、実際にその都度メタが大きく変わっています。ヒーロー選択とその能力がこのゲームに及ぼす影響の大きさは証明積みです。また、一定数のヒーローが殿堂入りしたあかつきには、殿堂入りヒーローのみでの環境も予定しているそうです。
完全競技用TCG
FABは競技用TCGとして根本からデザインされています。毎週世界各地で色々な賞金や賞品のかかった大会が開催されていて、2022年11月に予定されているワールドチャンピオンシップでは優勝者にはUS$10万ドル。賞金総額は$30万ドル。2022年度の年間賞金総額としては、US$100万ドルと日本円に換算すると億越えで、ブランド力を要さない新設会社の新規IPとしては破格となっています。
個人的には賞金のかかった大会参加を目指す予定も、時間もそして何よりも実力もないのですが、競技環境が公式でサポートされていることにより、プロプレイヤー達が切磋琢磨して常に新しい発見をもたららしてくれています。そして、競技環境の存在はこれらの情報を紹介するFAB専門のYoutubeチャンネルやWebサイトの存在につながっています。
様々なコレクター向けTCG
遊ぶよりもカードを集める方が趣味というTCGコレクターも多く存在すると思います。コレクターにもいろいろな度合いがあり、自分の気に入ったカード類のみ集めるコレクターもいれば、全てのカードを初版も含めてプレイセットで集めるフルコンプリートレベルまでいると思いますが、FABは段階を追ったコレクターにとって絶妙のバランスで設計されていると思いました。
初版が廃盤で高額すぎて手に入らない場合はアンリミテッド版。プレイセットが全て揃った後でも、虹色に光るキラキラカードやプロモカードなどに加えて、メタル感溢れるコールドフォイルという特殊加工版も存在していて、コレクターの深みを目指せばどこまでも沈める設計となっています。
未来の可能性
海外では新規カードゲームの寿命は2~3年と言われているそうです。発売当初、大きな話題を呼んだゲームでも気づいてみれば発売から2〜3年の時点で斬新さと話題性が失われれ、既存のプレイヤー人口も他のゲームへ移行、相手がいないので新規プレイヤーの獲得もできないという悪循環に陥ってそのまま自然消滅してしまうというゲームが多いそうです。
FABはニュージーランドに本社を構えるLegend Story Studiosが開発した完全新規のIPで会社自体、FABの為に設立され、現在もFAB以外のゲームは発売していまいせん。無名の会社が作った新規IPの上に発売時期がコロナと重なり既に消えていてもおかしく無かったはずのゲームですが、ソーシャルミディアなどによる口コミでその人気は拡大し続け、今なおプレイヤー人口を増やし続けています。
つい先日発表されたプレイヤーの投票で決まるイギリスのウェブサイトの一つTabletop Gamingではアップライジングセットはマジックの神河セットを抑えて堂々の2022度ベストTCG賞を受賞。
FABは発売から3年が経経った今でも、勢いを失うどころか加速し続けてるようです。公式に日本語化はされていませんが、最近は日本国内でのプレイヤーも増えているようで有志の方達が活発に国内でのイベントや、ソーシャルメディアを盛り上げてくれています。そして、つい先日、開発者のホワイト氏が公式な日本国内イベントを2023年度中に予定しているとYoutubeのインタビューで公言しました。
今後、5年、10年そして20年後もTCG業界の第1線に存在していける可能性を十分に感じさせてくれるゲームです。
既にゲームをプレイされている方、これからプレイしようと思っている方、あなたにとってのFabの魅力はなんですか?