FABは他のTCGゲームと比較すると一貫性が高く設計されています。今回は具体的にこれを数値としてみてみようと思います。
高い再現性からくる一貫性をもったデッキプレイ環境
カードゲームにおける再現性の指標の一つとしては、特定のカードがゲーム中に手札にくる確率で判定できます。構築したデッキの戦略の鍵となるカードが1枚あるとして、そのカードが試合中手札にもし1度も引けなかったら、その戦略が使用できないことになります。
再現性が高ければ、一貫性を持ったデッキを作りやすくなりプレイヤーのスキルがより反映されるようになります。
超幾何関数
この確率の計算は「Hypergeometric Function 超幾何関数(ちょうきかかんすう)」という数学の関数を使用して計算できます。
もちろん、数学の理解は一切必要なく便利なオンライン計算機で簡単に計算できます。これはFaBのデッキ構築サイトFaBraryにも搭載されています。
上の例だとデッキサイズ60枚、初手の4枚、デッキ内に含む特定のカードの枚数は1枚。手札に必要なカード枚数は1枚と入れてCalculateを押すと、最低でも1枚のカードを確率は7%となっています。
GoogleシートやマイクロソフトのエクセルにもHYPGEOMDISTとしてこの関数が搭載されています。
フレッシュアンドブラッド
フレッシュアンドブラッドの計算では以下の4点を仮定しています。
仮定
- 初手サイズは4枚
- 各ターン4枚ずつ引く
- 同カードは最大3枚までデッキに含める
- デッキサイズは60枚
マジックザギャザリング
マジックの計算では以下の5点を仮定しています。
仮定
- 初手サイズは7枚
- マリガンはしない
⚠️マジックは初手はマリガンを使って引き直すことができるのですが、実際特定の1枚のカードを手札に引くためにマリガンを初手から行うことはほぼあり得ないので、ターン1の確率は多少上がることになりますが今回は計算に入れていません。 - 各ターン1枚ずつ引く
- 同カードは最大4枚までデッキに含める
- デッキサイズは60枚
比較
フレッシュアンドブラッド | マジック | |
---|---|---|
デッキサイズ | 60枚 | 60枚 |
初手サイズ | 4枚 | 7枚 |
同カード最大枚数 | 3枚* | 4枚 |
各ターン手札に引ける枚数 | 4枚 | 1枚 |
それぞれのゲームの基本システムを比較すると、初手サイズとデッキに含める同カード枚数の上限はマジックの方が多いのですが、FaBは4倍の枚数を毎ターン引けるように設計されています。
もちろん実際のゲームでは戦略やデッキ設計の段階で、ドローエンジンを加えてより複数のカードを引いたりマジックでは60枚以上のカードで構築したデッキなどもありますが今回の目的は全般的にプレイスタイルに関係なくほとんどのプレイヤーが体験する感覚を比べる目的でみていきます。
70%
任意で7割以上で最低1枚の特定のカードを手札に引けることを、戦略として安定して使える数値と定義します。
最速ターン比較
それぞれ上限の枚数をデッキに含んだと仮定して、最速で何ターン目で7割以上の確率で最低1枚のカードを手札に引けるかを比較してみます。
この比較は例えば、コンボデッキで鍵となるカードが手札に一定して引ける最速のターンとして考えられます。例えば、Kanoのバリエーション・BrainstormデッキにおけるBrainstormを表します。
ブレーンストーム
ターン終了時まで、あなたのヒーローは”あなたがこのアクションフェーズ中にカードを1枚引くたびに対象に1点のアーケーンダメージを与える”
マジックで4枚積みしたデッキだと7割に達するのは10ターン目なのに対して、FaBの3枚積みデッキだと5ターン目になっています。
アグロアーキタイプなどのデッキなどは4、5ターンで試合が終わってしまうのことも多々あるので10ターン目では特定のカードに頼った戦略としては一貫していると言えません。
ただ、実際の試合なると、これを踏まえて1枚のカードに頼るのではなく、例えばマジックだと初手で使えるカードは基本的に1マナカードなので手元に1マナカードが初手に来るように複数の1マナカードをデッキに含みそのうちどれかがくればいいという計算でデッキが構築されています。
Xターン比較
長期戦を意識したコントロールアーキタイプのデッキなどでは、特定のカードはゲーム中盤から後半までに手元に来れば十分というプレイスタイルなので、例えば10ターン目までに手札に目的のカードが7割以上の確率で引けるためには何枚積みが必要かを比べてみます。
マジックだと上限の4枚積みで10ターン目で、特定のカードを引くことができます。これに対して、ふれッシュアンドブラッドだと2枚積みならほぼ9割、1枚だけだと7割を超えるには11ターン目までかかる計算ですが、FaBは後手のプレイヤーは自分のターン開始時に手札を完全に補強できるので、先手プレイヤーの攻撃で4枚全ての手札カードでブロックしたとすると、確率表は後手のプレイヤーの自分の最初のターンは2ターン目の数値と一つずれるので、10ターン目ので7割越えが後手なら狙えると言う計算になります。
その他の構造
ここまでで既にFaBの一貫性の高さが証明されたと思いますが、FaBのゲーム構造にはさらに確率を飛躍的に上げる構造がなされています。
3色サイクル
FaBでは多くのカードが3色のサイクルで存在していて数値的効果の差を気にしないなら各色3枚ずつ含めば最大で同種のカードを9枚まで含むことができるようになり、9枚積みのデッキだと7割はなんと2ターン目で達成することができることになります。
装備品
FaBの最大の特徴と言っても過言ではないのが、ゲーム開始時から場に公開状態で手札とは別に置かれるのが装備カードです。これらのカードは運作用されることなく確実に最初から場に出ているカードなので、それ自体がゲームの一貫性の象徴になっていますが装備品をドローエンジンに当てることも可能になっています。
インスタント – 希望の商人のフードを破壊する: 好きな数だけ手札のカードをデッキに戻しシャッフルする。そして、同じ枚数のカードをひく。
摂理の王冠で防御したとき、手札またはアーセナルからカードを1枚デッキの一番下に戻しても良い。もしそうしたならば、あなたは1枚カードをひく。
考察
マジックなどのゲームシステムと比較すると、FaBで各試合中に特定のカードが手札にひける確率はかなり高く設定されていることが分かりました。これ自体はゲームの一貫性・再現性の高さを証明したことになるのですが、1プレイヤーとして何故このことがゲームの魅力と繋がっているのか考えてみました。
もし、狙っていたカードがゲーム中に一度も手札に引けなかった場合、プレイヤーとしては「何もできなかった。完全に運が悪かった」と思えてしまうのではないでしょうか?
もし、手札にカードが最低でも一度はひけたけど、思い通りにそのカードが使えなかった場合はどうでしょうか?
結果だけ見るとどちらも特定のカードが思った通りに使えなかったという点は同じでも、プレイヤーとして受ける印象は全く違うのではないでしょうか?
実際、カードを引くタイミング自体は運以外の何者でもなく、そのせいでカードを思い通りに使用できなかったと言うのも運の要素に影響されています。しかし、プレイヤーとしては試合中手札に最低1度でもカードが引けていれば、「あの時、別のことしていればこのカードを使うことができたかも?」と「もし」の考察が行えるようになり、この「もし」の考察がプレイヤーにとってはカードが使用できなったのはプレイスキルのせいだと思わせてくれている気がします。
運の要素はトレカには不可欠で、運の要素こそが「同じゲームは決してない」トレカゲームの最大の特徴であるゲームバリアンスを生み出しているのですが、FaBはこれに絶妙なレベルでの再現性の高い、一貫性をもったデッキが使用できるプレイ環境をプレイヤーに提供してくれてると思います。これにより、プレイヤーは「運よりもスキル重視」のゲームと感じさせてくれているのではないでしょうか?