前回に引き続きフレッシュアンドブラッドTCGの予想を遥かに超えた第一印象について語っていきます。今回はプレイスタイルの変化を可能にしている、正しい「ヒーローシステム」設計に注目してみます。
TCGの魅力は何かと聞かれたら、マジックの開発者であるマーク・ローズウォーターも発言したようにプレイするたびに変化するゲームです。特に使用するデッキによって変わるプレイスタイルの変化は同じゲームをしているのに全く違うゲームをしている感覚を味わる点だと思います。
フレッシュアンドブラッドはプレイヤーの分身となるヒーローを戦わせる、ヒーローシステムを採用しているためヒーローを変えるだけで誰にでもその変化がすぐに感じられる設計になっています。
ヒーローシステム
フレッシュアンドブラッドは自分が選んだヒーローと相手のヒーローの一騎打ちで先に相手のヒーローの体力を0にした方が勝ちという他のゲームにも多く見られる構造です。プレイヤーの分身となるヒーローを使用としたTCGは他にもいろいろありますが、現在世界的に代表的なものはハースストーンではないでしょうか。
ヒーローシステムを使用しているカードゲームはマジックのようにプレイヤー自信を攻撃し合う構造を使用したゲームと比較すると基本的に3つの特徴があります。
- ヒーロー能力
- ゲーム開始時のパラメータの調整
- カードプール制限
ヒーロー能力
あなたのアクションフェイズ中に攻撃力6以上のカードが一枚捨てられた時、威嚇を発動する。(対象のヒーローは手札から裏向のカードを1枚追放する。こうして追放されたカードは、あなたのエンドフェイズの開始時に全てて持ち主の手札に戻る。)
個人的には理想的なヒーロー能力のデザインとして求めるのは3点。
①テーマに沿ってヒーローの特徴を感じさせる。
②それ自体はゲームの勝利に大きく影響しないが、他のカードとのコンビネーションでプレイスタイルを定義する。
③ゲーム中複数回使用可能
3点は密接に関係していてヒーローの特徴を感じさせながら複数回使える能力は、どのゲームでは必ず使える一貫性を持った手札カードのようなものだと筆者は考えています。フレッシュアンドブラッドのヒーローシステムは個人的には理想的で3つの条件全てをクリアしています。
また、ハースストーンのように1クラス、1ヒーロー、つまりヒーロー=クラスでわけられている場合、実際ヒーローを選ぶというよりクラスを選ぶという感覚になってしまいますが、フレッシュアンドブラッドでは同じクラスでも違うヒーローが存在しているので、プレイヤーは自分のお気に入りのヒーローを見つけることができ、より深くゲームに入り込むことができます。
例
効果 1ターンに1度 – あなたのコントロールするアッタクカード各ターン最初にヒットした時、コスト0のカード1枚を捨ててもよい。その場合、デッキからコンボカードを1枚を探し表側に向けて追放し、デッキをシャッフルする。このターンでそれをプレイしてもよい。
例えば忍者ヒーロー・さすらいのカツは「コンボ」カードを使い連続攻撃するのが攻撃の中心になります。ただコンボの恩恵を受けるには、使用カードの順番が決まっているため普通に手札にカードを引くのを待つと確率上、戦略として使用するには運の要素が強くなりすぎてお遊びデッキになっています。よって彼のコンボカード専用の山札サーチ能力は絶妙に感じました。
効果 1ターンに1回 – 武器攻撃がヒットしたらターンの間に同じ武器でもう1回攻撃できる
対してドリンシア・アイロンソングは武器を中心に戦うヒーローなので通常では2度攻撃できない武器も彼女の能力で2度攻撃できるようにするとテーマにあっています。
パラメータの調整
ヒーローシステムの使用の利点の1つはゲーム開始時にヒーローのパラメータを調整できる点にあります。フレッシュアンドブラッドでは2つのヒーローパラメータ、ライフポイントとインテレクトがあります。
ゲーム開始時のライフポイントに差をつけることで、ヒーロー間でのバランスを取ることが可能になります。
インスタント – [3 Resource]: デッキトップのカード1枚を見る。「非攻撃」アクションカードだっら、追放してよい。その場合、このターンでそれをインスタントとしてプレイしてよい。
例えばフレッシュアンドブラッドのヒーローの多くは40点のライフで始まりますが、カノはそれよりも10点も低い30から始まります。これはカノの能力とプレイスタイルの強さに加えて、魔道士が高い攻撃力を持つも、防御や体力に乏しいという世界観にも一致しています。
インテレクトはフレッシュアンドブラッドの特徴の一つである、各自分のターン終了時に補強する手札の枚数を決めるパラメータです。現在公開されているヒーロー全ては4点のインテレクトですが、今後3点や5点のインテレクトを持ったヒーローが登場することは安易に予想できます。
カードプール制限
カードゲームにおいてプレイスタイルに最も大きな影響があるものといえばやはりカードプールです。カードプールとは、デッキに入れることができるカード群を表しています。
フレッシュアンドブラッドTCGでは、ハースストーンなどと同様にヒーローのクラスがカードプールを決めますが、他にもヒーローキャラクター限定のカードとセット4から加わったタレントなど他にもカードプールを左右する要素がいくつかあります。
カードプール制限は開発者がカードデザイン時に見つけられなかったゲーム全体のバランスを壊してしまう「縮退コンボ」の登場確率を大きく減らすことができ、より思い切ったユニークなカード作りが可能なります。
クラス制限
例えば、コンボキーワードをもつカードは忍者のクラスカードなので忍者をヒーローに選んだ時のみ使用できます。忍者をプレイして思ったのが個々の攻撃は比較的弱いものの連続攻撃が面白く、格闘ゲームのコンボのように特定の連続技を決めてボーナスを得た時の快感が楽しいということ。
ターゲットの武器攻撃 +3。 繰り返し – このチェーンリンクで防御側が手札のカード1枚で防御したら、ターン終了まで武器 +1。
これに対して、戦士クラスは武器を使い相手の防御や攻撃に対してリアクションでカウンターをかけるのを得意とします。
得意技
カツの得意技 (カツがヒーローのときのみデッキに含める) コンボ – コンバットチェーンの最終攻撃がムゲンシ:リリースだった場合、コストとしてリソース X を支払い、発動する。その場合、ターゲットのカード (サージング・ストライク、ウェルミング・ガストウェーブ、ムゲンシ:リリース) X 枚を墓場からデッキへ移してシャッフルすると、このカードは [Power] +X。
フレッシュアンドブラッドは、クラス別にカードを分けるだけではなくさらにヒーローそれぞれに得意技カードを作成しました。
例えば、忍者クラスのヒーローはカツ以外にも存在しますがカツの得意技であるロード・オブ・ウィンドはカツがヒーローの時のみデッキに含むことがでカツ以外の忍者ヒーローではデッキに含むことができません。まさにヒーローを個体として認識して、それぞれ特有の必殺技があるこを表してくれている構造です。
ファーストインプレッション
実は、筆者はこれまでヒーローシステムを使用したゲームにあまり良い経験がありませんでした。これまでプレイしてきたゲームは、ヒーローを選んだ後のプレイスタイルがあまりにデザイナーによって固定されてる感覚でTCGの特徴であるはずの自由度がヒーローを選ぶという段階で8割から9割終わってしまっている気がして、ヒーローシステムへの抵抗はあったのですが、フレッシュアンドブラッドは一つのヒーローシステムの完成形を経験させてくれました。