【FAB TCG】 ファーストインプレッション 第1回「類まれな高い戦略性」

基本オンラインTCG歴十数年の筆者が、たまたまYoutubeで発見した普段は絶対にクリックしないはずの動画が、個人的には人生史上最高にハマるゲームになったかもしれません。存在を知ってからわずか4週間弱、毎日のようにゲームについて調べ、早くも大人買いで6万以上費やし、これまで興味が全く湧かなかった人生初のオフラインのゲームイベント(プリリリース・シールド)にまで参加してしまいました。

間もなく、ファンによる日本国内初のイベントも控えているFlesh and Blood TCG(フレッシュアンドブラッドTCG、略称FAB)の第一印象シリーズです。初回はこれまで経験したことのない高い戦略性を可能としているゲーム構造3点に注目して見ました。

フレッシュアンドブラッドTCGって?

フレッシュアンドブラッドTCGはファンタジー世界を舞台としたヒーロー対ヒーローの対面専用トレーディングカードゲームです。第一弾のアルファエディションは2019年の十月に発売。ゲーム名は今では主流となったオンラインカードゲームを再びプレイヤー同士が対面で「生身(Flesh and Blood)」でプレイするというところから生まれたそうです。

ゲームの基本はプレイヤーの分身となるヒーローを1体選び、先に相手のヒーローの体力をゼロにした方が勝ちとなります。ヒーローの行動はデッキから引いたカードとゲーム開始時から設定されている自分が選んだ装備品カードを使って行います。

個人的には初見でのFABに対する印象は、これまでプレイした複数のTCGやそれ以上の数読み込んできた他のTCGのゲームルールと比べると斬新さは感じませんでした。

しかし、実際にプレイしてみるとゲーム開発に7年かけたとのことでゲーム構造は細部にわたり練り込まれていて、プレイヤーのスキルとトレーディングカードにおける運の要素が絶妙なバランスであることが初プレイでもすぐに分かりました。

2022年7月には日本国内で非公式初イベントも行われ、2022年9月にはイギリスのボードゲームサイトで故2022年どベストTCGオブザイヤーを受賞しました。

これまで数多くゲームがTCGの王道であるマジックとの競合を目指しても、たどり着けなかった境地に今最も近いゲームと言っても過言ではないかも知れません。

トレカ史上類まれな高い戦略性

マジックなどの戦略性を重視しているトレカは、チェスや将棋などの戦略ゲームに例えるられることも少なくありません。しかし、多くの場合はデッキ構築がゲームプレイ中の判断より大きく影響していることが多々で、ゲーム序盤にはマナ縛りで出せるカードが限られて、中盤から後半にかけては手札補強などをしっかり行っていないデッキだと各ターン自分の手元にきたカードを場に出すか出さないかの2択になりがちでプレイ中の判断は限られています。

しかし、フレッシュアンドブラッドTCGでは相手のターンも含めて毎ターン規定の時間内には無数とも思える選択肢があり、トレカとしては類まれな高い戦略性で感覚的には最も将棋やチェスに近い深い思考が意味を持つゲームと感じました。これを可能としているのはいくつもの細部から練り込まれたゲーム構造にありますが、特に以下の3点が鍵になっているのではないでしょうか?

  1. 1枚3役
  2. 組み込まれた手札補強エンジン
  3. デッキの循環

1枚3役 “プレイ、ピッチそれともブロック”

フレッシュアンドブラッドTCGでは大半のカードが1枚3役を行える設計になっています。

従来通りにカードを場に出してカードの効果を発動させるカードを「プレイ」する方法。

カードを「ピッチ」することでマジックなどにおける土地カードのようにカードをプレイするために必要な使用コストを支払う手段(左上のシンボル)。

または相手の攻撃をブロックするのに使用(右下の数値)としても使えるようになっています。

例えば、手札に4枚のカードを持った状態で、相手が5点の攻撃してきました。手札にある4枚は2点ブロックが2枚と3点ブロックが2枚。

完全にブロックするためには2枚使用しなくてはいません。単純に考えれば3点1枚、2点1枚の合計5点でピッタリ・フルブロックすればいいのですが、ブロックに使用したカードは墓地送りになるので次の自分の攻撃ターンでは残った2枚だけ使用できることになります。

つまり、ヒーローの体力に余力があるなら相手の攻撃を受けて自分のターンで強大な攻撃をするというのも戦略の一つになります。

上の例で手札の4枚を見た場合、最も攻撃力が高いのはフライングキック。よって次の自分のターンこれを使用しようと考えた場合はリソースが最低でも2点は必要。だからフライングキックとリソースとして使う渦巻く霧の花を温存。よって残りの2枚でブロック。この場合は相手の攻撃を完全ブロックして自分のターンに5点分の攻撃なので5ー0で総合的には5点分のダメージをこっちが与えられる計算になります。

逆に相手の5点を全て受けて、4枚全て自分のターンに攻撃した場合はどうでしょう?まずは再発動という続けて攻撃が可能になるキーワードがある渦巻く霧の花で攻撃。次にフライングキック。そこにランジ・プレスで+1を加えれば合わせて8点分の攻撃を相手にできることになります。この場合は、総合で3点のコストがかかるのでブルータル・アサルトはリソースとして使用することになります。このケースだと相手と自分の点差を比べると8点攻撃で5点ダメージを受けるので+3点。

ただ、ランジ・プレスは+1点しか攻撃に加えないことを考えると攻撃にあまり必要ないのかもしれません。渦巻く霧の花フライングキックそしてこの2枚を使用するために必要なリソース3点を支払うカードを一枚自分のターンに温存すると考えた場合、残り1枚を防御に使うことができます。

ブルータル・アサルトランジ・プレスも3点のリソースを払える青カードでリソースカードとして見た場合は同じですが、防御カードとして比較した場合は、ブルータル・アサルトの方が防御3点で上なのでこちらを防御に使用した方がいいことになります。この場合は相手から受けるダメージは2点。自分のターンでは7点分の攻撃。総合的には2枚で完全ブロックした時と同じ+5点。

ただし、ヒーローが深紅の霞・イラなので、2回目の攻撃には+1が加わるということで最後の選択肢だとこの能力が発動して+6点になります。

これはあくまで簡単な選択肢の例で、他にも複数の選択肢が存在します。しかも、実際のゲームでは相手がリアクションを隠し持っている可能性、装備カードや伏せたカードがあったり、先のターンを見越して相手に一気に大ダメージを与えるように手札にカードが揃うのを待つ戦略であえて、渦巻く霧の花フライングキックを温存するなどプレイヤーの選択の可能性はまさに将棋などのように深く考えれば考えるほど広がっていきます。

ただ、これはゲームルールが複雑になっているということではなく、深い戦略を求めるプレイヤーには最上の一手を追求することを楽しめるゲーム構造になっているということです。実際、フレッシュアンドブラッドTCGではこのレベル以上の駆け引きが毎ターン行われています。

組み込まれた手札補強エンジン

もし毎ターン1枚しかカードが引けなければ、ゲームが進むにつれて手札が自然となくなり結果的にそのターンで引いた手札をプレイするか・しないかの2択になってしまいます。

しかし、フレッシュアンドブラッドTCGではプレイヤーは毎回自分のターン終了時に手札をヒーローのインテリジェンス(左下の数字)まで戻すというルールになっているため、デッキに特殊な手札補強がなくともプレイヤーは常に手札に毎ターンカードが複数枚ある状態になります。

4枚全て入れ替えたいなら、手札を完全に使い切って4枚ドロー。1枚だけは次のターンに温存したいならアーセナルに裏返しで設置して四枚ドロー。もちろん手札にカードを集めたい場合は、あえて温存して使用した分だけドローなどもできます。

デッキの循環 「スタミナ」

カードをリソースとして使用する場合は、このゲームでは「ピッチ」すると言いますが、ピッチされたカードはターン終了時にピッチゾーンから好きな順番でデッキの一番下に戻すルールになっていてます。実際にゲームをプレイしてみると、デッキ中の全てのカードを1周完全に循環することも少なくはありません。

攻撃や防御に使用されたカードは墓地に送れられるのに対して、ピッチされたカードはデッキに戻っていくので、まるでヒーローのスタミナを彷彿させます。

例えば、とにかくカードを使いまくって速攻でゲームを終わらせようとした結果、2巡目になると山札に戻されていたカードは弱いものばかりになり、相手に攻撃が全く届かなくなり、スタミナ切れ状態となります。

上級者になってくるとおそらく、デッキが2巡目に入ることも早い段階で計算して、それに合わせて強力なカードをピッチ=スタミナ温存させておくという戦略も当たり前になっているのではないでしょうか?

また、山札の一番下ににカードを戻すときにはピッチゾーンにあるカードを好きな順番で戻せるので、中には自分が山札に戻したカードの全て順番を覚えていて2巡目に突入した時点でデッキからどのカードをどのタイミングで引くかを予測しながらできる「天才型」プレイーもいるのではないでしょうか?

今回紹介した3点の他にもフレッシュアンドブラッドの戦略性の奥深さに貢献しているゲーム構造は色々ありますが、それはまた次回。

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