今回の注目は、Outsidersから登場する装備サブタイプのQuiver(矢筒)です。ゲーム構造的に矢筒の登場には2段階で驚かされました。
Quiver(矢筒)
(矢筒は1つまで、武器ゾーンに弓と一緒に設置できる。)
Instant – {r}{r}{r}: Quiver of Abyssal Depthsを破壊する: 3本まで名前の違う矢を墓地からデッキにシャッフルする。
(矢筒は1つまで、武器ゾーンに弓と一緒に設置できる。)
Instant – {r}{r}{r}: あなたのデッキの一番上のカードを公開する。もしそれが矢ならば、それをあなたのアーセナルゾーンに表向きで設置し、Quiver of Rusting Leavesを破壊する。
矢筒は、アウトサイダーで初登場の装備サブタイプで、通常弓は両手持ちの武器なので別の武器を持つことはできませんでした。しかし、矢筒は両手で持っている弓とは別に武器ゾーンに装備することができます。
クラス強化
まず、ゲーム構造的にこれらのカードの興味深いところは、矢筒の登場でレンジャークラスは通常のヒーローが持つ6つの装備スロットにさらにもう一つ7つ目が加わったと解釈できる点です。
FaBの装備カードは、ゲーム開始時から場に出ているので、通常のTCGにおける試合中にデッキから手札に引けるか引けないかの運の要素を省いた特別な存在です。
そこにクラス限定のスロットが追加されるというのは、それだけでゲームデザインの幅がグッと広がるということ分かります。そして、これはクラス全体のレベルの底上げに使えるデザインスペースということを意味しています。
ただし、この仕組みはTales of Ariaで既にガーディアンクラスがオフハンドというサブタイプを使って盾を登場させています。
あなたがRampart of the Ram`s Headで防御する時、あなたは{r}支払ってもよい。もしそうしたならば、これは+1{d}をターン終了時まで得る。
その後も、オフハンド装備はArcane LanternやOrnate Tessenといった一般装備としても登場しています。
よって、これ自体はゲーム全体を通して見ると全く新しい試みというわけではないのですが、現在比較的にメタ環境で劣勢なレンジャークラスにも新しい専用装備カードタイプが追加されるのは大きいですね。漫画家でテコいりが入った感じでしょうか?そして、それをガーディアンには盾、レンジャーには矢筒というテーマにピッタリ合わせて行っているのが個人的には◎です。
ヒーロー強化
新装備スロット=新カードタイプ登場で1段テンションが上がったのですが、実は今回これを記事にしようと思ったのはもう一つの試みの方です。
アゼリア専門
あなたが矢をあなたのデッキからあなたのアーセナルに表向きで設置する時、あなたは{r}を支払ってもよい。もしそうしたならば、1点のエイムカウンターをそれに置く。
リプタイド専門
Instant – Driftwood Quiverを破壊する: あなたのアーセナルからカードを1枚、あなたのデッキの一番下に置く。
これらの2枚の矢筒の注目点はどちらもヒーロー専門がついているという点です。
これまではSpecialization=専門カードは基本的に各ヒーローの必殺技的位置付けでした。中には、例外的にArknight Shardの様にリソース専門カードだったり、構築済みに含まれていたブリッツ専用のメンター(恩師)カードなどもありましたが、どれも全てデッキ内に含まれるカードで運の影響を受けるカード達でした。
専門が装備品についたのは今回が初めてです。この新構造の可能性が見出すものは、今後これまでとはまた違うレベルでヒーローをカスタム化できる可能性ができたことを意味します。
Vs. 専門デッキカード
既に書きましたが、装備カードとデッキ内に含まれるカードの大きな差は、装備品は運の要素に作用されないということです。
Vs. クラス装備
クラス装備との差は、専門を使うことで同じレンジャークラスのヒーローでもリプタイドとアゼリアどちらかのみに限定させることできると装備となるので、専門装備はより細かい設定ができることになります。
カードプールを分けることで、意図しないシナジーを心配しなくても良くなるので、デザイナーより攻めた・独特なカードデザインに踏み切る可能性が出ます。
Vs. ヒーロー能力
ヒーローカードに直接テキストを書き込めば、それでヒーロー限定の能力として設定できるわけですが、この場合、その能力はヒーローを選んだ時点で固定されてしまっていることになります。
専門装備にすることで、視点を変えてみるとヒーローの能力の一部がカスタマイズできると解釈することもできます。
感想
あくまで可能性・個人的な願望ですが、ヒーロー専門装備の登場には2つの大きな可能性を感じました。
まず1つ目は、既存のヒーローの底上げです。今回は新装備の矢筒に専門が着きましたが、今後他のヒーローに比べて圧倒的にメタ環境で劣勢のヒーローの専門として通常の武器や、装備を追加すれば他のクラスへの影響なくそのヒーローのみの底上げ可能となります。
2つ目は、シルバーブレットの作成法としてです。TCGにおけるシルバーブレットとは、ゲーム全体のバランスを壊す・環境を不健康なものにするある特定の強力すぎるカード・コンボへの対処法の一つです。強すぎるカードを禁止カードにするのではなく、そのカード・戦略をピンポイントで対象にした対抗カードがシルバーブレットと呼ばれます。
しかし、ゲームデザイン的にはシルバーブレット法には問題がいくつかあるようでその一つが、シルバーブレットも強力すぎるカードもデッキに含まれるカードだと、結果的にゲームの勝敗が先にカードを引いた方が勝つという完全運任せのゲームとなってしまうこと点です。
FaBでは装備品には運の要素がないため、最初から装備しておくことで運に頼らないシルバーブレットとなを作れることになります。
シルバーブレットのもう一つの大きな問題は、全員があるデッキへの対抗措置だけのために同じカードをデッキに入れるとなると、その分デッキのスペースがなくなり、結果的にゲーム環境全体のバリアンスを下げてしまうことです。この辺は実際にシルバーブレットと、その対象のバランスが重要にあると思いますが、もし対抗措置がうまく機能すれば、メタ環境も全体的にシフトして強すぎたカードも禁止せず・色々なヒーローの群雄割拠環境なんてことも可能かもしれません。
もちろん、ヒーロー専門自体には注意点もあります。極端ですが、このシステムを乱用するとヒーローの選択=カードプール制限となってしまい、単純にカードプールをクラスやタレント以上さらに細かく分けるだけになることも。ただ、ローテイションなしのFaBでは今後もカードプールが増え続けていくので、今後はクラスとタレントよりもさらに1段深いレベルでのカードプール分けも必要になってきそうで、ヒーロー専門装備はまたそこに一歩近づいたのかもしれません。
願望・妄想はさておき、また一つFaBのデザインスペースが開かれましたね。