何事も一番最初から体験したいと常々思っている筆者が、最初のセットの発売から2年半遅れで最近始めたばかりのフレッシュアンドブラッドTCGの歴史を主観を交えながら辿っていきます。これから始める人、古参プイレイヤーの人、一緒にFABの歴史を辿っていきましょう。第1回はオフィシャルサイト最初の記事が投稿された2018年12月から最初の公式構築フォーマット大会が開催された2019年末まで。
全ての始まりは2013年だったそうです。Flesh and Blood TCGのCEO、創始者そして今もなおゲームのリードデザイナーであるジェームズ・ホワイト氏はまだフレッシュアンドブラッドTCGの詳細な情報が公開される前に書かれた記事でこのように語っています。
自問自答の「何故デジタルゲームを作らない?」には地元のゲームショップで育ったホワイト氏は対面だからこそ生まれるコミュニティ1、現実にある物だからこそ感じられコレクション価値2を答えとしてあげています。
1. Why aren’t we making a digital game? Community
2. Why aren’t we making a digital game? Collectibility
ホワイト氏にとっての理想のゲーム体験とはゲーム中、プレイヤーは常に意味のある決断を迫られ続けるゲーム。そしてこの根本に関わっているのはゲームのリソースシステム構造と語っています。
多くのゲームはデッキ中に含まれるリソースカードを引きながら、徐々にリソースを増やしていくシステムを採用しているが、これが悪名高い「土地事故」の原因になっていると語っています。
また、近年増えきたリソースを別の山札に振り分けたシステムだとヴァリアンス(分散)が完全に失われ、プレイヤーは各ターンどれだけのリソースが手元にあるかはっきり分かっているため、結果的にゲームは常にいかに各ターンのリソースを活かしきれるかの効率性とテンポを重視したプレイになり、このシステムを採用したゲームはほぼ似たようなゲームになりがちと指摘しました。
そこで2013年にフレッシュアンドブラッドのリソースシステムの開発を始めるにあたり、FAB開発チームは以下の3つのゴールを掲げたそうです。
- ゲーム開始時から全力状態
- デッキは1つだけ
- 分散を減らす
Designer: The Cost of Meaningful Decisions
ここから生まれたのが、破棄・犠牲リソースシステムの一つの完成形とも思える「ピッチシステム」ですね。
ホワイト氏による最初デザイン哲学シリーズの記事から9ヶ月。
世界初のフレッシュアンドブラッドTCGのお披露目は2019年8月31日のワールドプレミア。開催地はLSS本社のあるニュージーランド・オークランド。
この大会は全プレイヤーがイラクリムゾン・ヘイズのウエルカムデッキを使用。優勝者には$1000の賞金が授与。
数百名が午前のFABのプレイ方法を学ぶイベントに参加したそうです。その内120人が賞金がかかったトーナメントに参加。
ウエルカムデッキは以降ゲームショップでは、なんとフリーで配布されるようになり、まさにゲームに興味が少しでもある人ならとりあえずは試してみて!(絶対に面白いから)と言わんばかりの開発者たちの自信の表れが見えます。
2019年九月には、FABの最初のセットであるWelcome to the Rathe(WTR)の発表と同時に非売品としてゲームショップにFABの世界観設定集が配布されました。この設定集は結局、プレイヤーの手元には今尚届いていないためデジタル・スキャン版をLSS公認非公式サイトから無料でダウンロードできます。
この設定集には当時発表されていなかったけど、その後に追加されたクラスも複数リストされているので、今尚このリストにあってゲームに登場していないものは、ほぼ確実に今後登場すると思われます。
2019年10月11日。フレッシュアンドブラッドTCGの最初のセット「Welcome to the Rathe」ブースタパック、各4ヒーローそれぞれの構築済みデッキも発売。最初のセットということでWTRの4体のヒーローは比較的シンプルなプレイスタイルを採用しています。他のクラス分類を使用したゲームと同様に、各ヒーローが特有のプレイスタイルを元にデザインされいることが、初プレイでも直ぐにわかるようになっています。
放浪者・カツ 「連撃の達人」
デッキ内容:カツヒーローデッキ
効果 1ターンに1度 – あなたのコントロールするアッタクカード各ターン最初にヒットした時、コスト0のカード1枚を捨ててもよい。その場合、デッキからコンボカードを1枚を探し表側に向けて追放し、デッキをシャッフルする。このターンでそれをプレイしてもよい。
筆者が一番最初に息子に頼んでプレイしてもらった試合がイラのウエルカムデッキとWTRブースターボックスから手に入れたカードで構築したカツの構築済ヒーローデッキもどきでした。
FABの攻撃は高さ(Tall)か幅(Wide)かで分類されますが、カツは個々の攻撃は弱い分、連続攻撃でダメージを与える幅を使ったヒーローです。他の3ヒーローが各ターンに基本1回しか攻撃できないのに比べてカツは3、4回の攻撃が頻繁にできます。忍者の俊敏性がゲームデザインにマッチしていると感じました。
開発者によって意図的に作られたシナジーであるコンボカードを決まった順番で繋がった時は「達成感」を得られます。
参考: Hero Zone: Katsu
ブラボー・ショーストッパー 「FAB流のコントロールデッキ」
デッキ内容:ブラボーヒーローデッキ
アクション-[2 resources]ターン終了時まで、あなたの[3 resource]以上のアッタクアクションは支配をえる。ゴーアゲイン。
支配は相手が一枚以上のカードでブロックできないという能力です。
しかし、ブラボーのプレイスタイルの特徴はこの一撃必殺よりも「FAB流のコントロールアーキタイプ」にあります。
1ターンに1度限定アクション – 3 [resources]: 攻撃
あなたのピッチゾーンに二枚以上のコスト3[resource]以上のカードがあるなら、アノソスは+2の攻撃を得る。
チャンスが来るまで防御に集中しつつ、アノソスで攻撃。ブロックの防衛値は基本的に3なので、アノソスの攻撃を完全にブロックするには二枚のカードを開いては必要とします。もしアノソスのボーナスを加えれば6点攻撃となり相手も無視できない攻撃をカードを消費せずに行うことができるのは絶妙なゲームバランスです。実際、WTR中アノソスは武器単体で見た時、最大の攻撃力を誇る武器です。
忍者と違いブラボーにはゴーアゲインを持つ攻撃が基本的にないので、攻撃の要はオーラを使用することになります。
ゴーアゲイン
あなたのアクションフェーズ開始時に、力の出現を破壊する。そして、次のガーディアンアタックカードは+3の攻撃を得る。
クラッシュ-もし壊滅の一撃が4点以上のダメージをヒーローに与えた場合、そのヒーローはランダムで二枚のカードを捨てる。
壊滅の一撃は、ブラボーのみが使用可能な「必殺技」的存在カードでのちに登場する他のガーディアンクラスでも使用はできません。ここで最も注目すべきは11点という攻撃力。これにもし支配が加われば相手は11点攻撃を一枚のカードで防ぐことになり実質防御不可能な攻撃になります。前のターンに力の出現をセットしていたなら14点の攻撃に!
ちなみにWTRからゆっくりと順を追ってゲームを始めている筆者はブラボーを試用中です。
参考: Hero Zone: Bravo
ライナー、猪突猛進大暴れ 「運を力に」
デッキ内容:ライナーヒーローデッキ
あなたが攻撃力6以上のカードをあなたのアクションフェーズ中に捨てる時、威嚇する。
威嚇はランダムで相手の手札を一時的に追放ゾーンに送り、相手が攻撃のブロックに使えるカードを減らすブルートクラス限定の能力。毎ターン手札カードを補充するFABはそれだけ手札をどのように使用するかがゲームの鍵になります。よってプレイヤーの意志とは関係なく手札を(一時的にでも)失うというのはFABでは全体のテンポを失う可能性があるとても強力な能力になっています。
参考: Hero Zone: Rhinar
威嚇もそうですがブルートクラスの装備品はサイコロの運まかせがあり、個人的にはライナーは運の要素をゲームに増やしたいプレイヤー向けな気がします。
インスタント-背骨のストラップを破壊する:6面体サイコロをふる。出た目半分の[resource]を得る(切り捨て)。
戦闘摩耗
1ターンに1度のアクション-0:6面サイコロをふる。出た目の半分のアクションポイントを得る(切り捨て)。
戦闘摩耗
WTRのブースターボックスを7箱開封した現在、筆者が持っているレジェンダリー装備は上のブルートヒーロー専用の足装備1枚だけ。FABでは装備品に特に金銭的価値と戦略的価値があるので、いずれはブルートデッキを作ってみようかな?と思っている今日この頃です。
ドリンシア・アイロンソング 「FABの模範ヒーロー」
デッキ内容: ドリンシアヒーローデッキ
1ターン1度効果 – あなたの武器攻撃がヒットした時、その武器でもう一度攻撃してもよい。
1ターン1度限定アクション – [Resource]:攻撃
もし夜明けの剣がヒットして、これがこのターン中2度目なら+1 [Attack]カウンターを夜明けの剣に置く。
あなたの終了フェーズの開始時に、もし夜明けの剣がこのターンヒットしていなければ、全ての夜明けの剣から全ての+1カウンターを取り除く。
ヒーロー対ヒーローのFABでは武器はゲームシステムの特徴の一つですが、ドリンシアはこの武器攻撃を専門としたヒーローです。特に、戦士クラスはWTRセットでは限らたアッタクリアクションカードが複数存在しています。忍者の幅のある攻撃戦略に対してドリンシアは流動的に高さを上げる戦略を要しています。
対象の武器は+1を得る。
反復 – もし防衛側ヒーローがこのチェーンリンク中に手札からブロックした場合、あなたのデッキから一枚のアタックアクションを検索し、それを表向きで追放し、デッキをシャッフルする。それをこのチェーンリンク中プレイしてもよい。
反復はリアクションにさらにボーナスを与える戦士限定の能力です。
参考 – Hero Zone: Dorinthea
FABの最初商品となったWTRのアルファエディションは2019年10月11日にアメリカ、オーストラリアとニュージーランド世界3ヵ国で発売。11月にはマレーシアでも発売。
発売直後からトーナメントを催し、ゲームショップでのプレイヤー人口を獲得するために当時は参加費無料でカジュアル・イベントのアーマリーを行なっていたそうです1。
1. Flesh and Blood The Calling New Jersey
FABは根本から競技TCGを意識してデザインされたゲームで、WTR発売から1ヶ月も待たずに賞金がかかった公式大会「ザ・コーリング2019」を開催。記念すべき大会最初の地はゲーム開発元のLSSがあるニュージーランド・オークランド。以降、シドニーそして舞台をアメリカ合衆国に移してニュージャージー州とテキサス州でそれぞれ総合賞金額US $10,000相当をリミテッドフォーマットを使用して行われました。
優勝 | 準優勝 | |
---|---|---|
TC Auckland 2019 | ブラボー | ライナー |
TC Sydney 2019 | ライナー | ドリンシア |
TC New Jersey 2019 | ブラボー | ドリンシア |
TC Texas 2019 | ブラボー | カツ |
初のコンストラクトフォーマット公式大会・Road to 10k Baydragonは2019年12月8日に開催。トップ4のデッキのうち3つはブラボー。優勝はブラボー。
優勝デッキはコントロールアーキタイプを意識して構築されたそうです。
硬く守り、可能な時は武器で攻撃。ゲーム序盤は攻撃力の高いカードをピッチ。ゲーム後半の相手の防御が手薄になったところで手元にこれらのカードが戻ってくる計算。
相手がなんとかブラボーの防衛網を突破しようとカードを使用し続ける中、こちらは武器攻撃を中心にしている為、ゲームが進むに連れてデッキサイズによる優位性を得られることになる。ターン15ぐらいから、相手のデッキはかなり絞られ、攻撃力の高い「レッドカード」とディフェンスリアクションは底を突き初めてくるはず。
Guest: Cayle McCreath’s Breaking Bravo
まさに防御に徹してスタミナ(デッキのサイズ)を温存し続け、相手がスタミナ切れになったところで攻め始めるプレイスタイルとテーマがコントロールアーキタイプにピッタリハマっている感じがします。
上記の優勝者本人が書いた記事ではそれぞれのヒーローへの対応策が非常に良く描かれていて当時からFABの戦略性の高さを確認させてくれます。
この時点では、「ブラボー」が頭一つ抜きでていましたね。
優勝者のブラボーデッキと開発者のライナーデッキの紙一重の激戦が動画公開されています。
この時点ではどうやらゲームの供給が需要に追いついていなかったようです1。
1.Happy New Year from LSS
2012年に開発が始まった、フレッシュアンドブラッド。2019年10月に無事3カ国同時リリース。発売直後からFABは競技TCGであることを賞金がかかったThe CallingとRoad to トーナメントで全面アピール。新規IPとしては十分なプロ・TCGプレイヤーの注目を集められていたのではないでしょうか?2020年はどんな年になったのでしょうか?