【FAB・理論】実践で使えるカード価値 : 「ハミルトン式・表現価値」

更新履歴
1/5/2023 – ラウンドをイニングと書き換えました。

これまではデザイナー観点からみたカードバリューである総合価値を考察してきました。今回は視点を変えて、プレイヤー観点から見たカードバリュー・表現価値をFABの初代世界チャンピオン・マイケル・ハミルトンの理論に沿って考察します。

カードバリューとは?

ここでいう「カードバリュー」はカードの金銭的な価値ではなく、各カードのテキスト効果なども含めて数値的に表したカードの価値です。

カードバリューは2種類に分けて考えられます。1つ目はデザイナー観点から見た、カードTotal Value(総合価値)。もう一つは、プレイヤー観点から考察するExpressed Value(表現価値)です。もし、それぞれのカードが数値化できるとしたら、二枚のカードを比較して「このカード強すぎない?」「このカード弱すぎ!」というカード評価に役立てたり、カードバリューの低いカードを高いカードと入れ替えてデッキを強化したり、試合中により高い数値でカードを使うことを意識してプレイすることで最善の一手を見つけることができたりその可能性は無限大に広がっています。

総合価値(Total Value)

ゲームの開発者がカード設計の段階で、それぞれのカード間でのバランスとゲーム内のインフレ避けるために、ある指標・デザインルールに沿ってカードを作っていることは簡単に想像できます。しかし、プレイヤーにとってはデザインルールはブラックボックスで公式に公開はされていません。

そこで我々は既存のカードから、ある仮説をもとに逆算してこのルールを導き出していくことになります。総合価値は1枚のカードにそれぞれ8点の価値があると仮定して、そこからデザイナーが各テキスト効果にどれくらいの点数価値を見出しているのか?を導き出し、実際のプレイにその点数分以上または以下の効果があるかをプレイヤーが判断することで各カードの評価に役立てることができます。

表現価値 (Expressed Value)

デザイナー観点から見た総合価値(TV)に対して、表現価値(EV)は完全にプレイヤー観点から見たカード点数です。表現価値は実際に試合中に使用したカードの用途によって変わる数値で、実践に使えるカードバリューです。

⚠︎総合価値も表現価値もどちらも造語です。前者はArsenal Passから、後者はYoutubeチャンネルVazerum Presentsで使われた造語を日本語化しました。

お待たせしました、シリーズ最後はプレイヤー観点から見た表現価値について考察します。

マイケルハミルトン

この記事の中心となるのはFaBの世界初チャンピオンプレイヤーであるMichael Hamilton(マイケル・ハミルトン)の理論なので、まずその理論のうみの親が一体どういったプレイヤーなのか簡単に説明します。

元々カードゲームは趣味としてプレイしていたそうだが、本格的に競技TCGを始めたのは後になってからでマジックのトーナメントにも参加していたようだ。プレイヤー人口の圧倒的に多いマジックでもそれなりの成績を収めていたようだが、コロナのパンデミックの開始と同時にマジックの公式競技大会がなくなり同時にマジックへの興味が薄れていったそうだ。この頃、現在もポッドキャストのコホストをしている友人のロジャー・ボーディー氏の紹介でフレッシュアンドブラッドに出会い、初めてプレイしたのは第5セットに当たるTales of Ariaの発売2ヶ月前(2021年4月ごろと予想)。

そしてハミルトンの輝かしいFaB実績は、そのわずか半年後から始まる。2021年10月 Calling Cincinnatiでのトップ8。その2週間後のCalling Orlandoでは優勝。しかも、当時はBriar(ブライアー)が主流だったところOldhim(オールドハイム)のコントロールデッキで大会優勝をおさめした。Calling Indianapolisでは当時の主流であったBravo Star of the Showを使って2度目のCalling優勝。この時点でFaB史上としてはゲーム開始当初、プレイヤー人口が圧倒的に少なかった2020年以来の快挙となる2大会優勝の実績を持っていることになりました。その後2022年9月に行われたUSナショナルでセット1のGenericコモンカードのWounded Bullを入れた驚きのIyslanderデッキを用いて優勝。他にもBattle Hardened Lilliでも優勝していて、2022年11月の時点でコンストラクとELOランキングでは堂々の世界1位。リミテッドでも世界3位にランク。そして、2022年11月に行われたFAB初の世界大会で見事優勝。彼の存在こそ、FABは運ではなくスキルを使ったゲームの証明だと言える。名実ともに誰もが認めるFAB界の世界No.1のプレイヤーだ。

2022年9月に行われたUSナショナルで優勝した時は、ハミルトンのチームが生み出したIyslanderデッキの内容には多くのプレイヤーが衝撃を受けました。FABの歴史に残る常識を変えたデッキの一つといえます。その時点までは、公式の大会では全く使用されていなかったセット1からの一般・コモンカードで「Wounded Bull」が彼のIyslanderデッキに含まれていて、大活躍したことには驚きでした。

Wounded Bullをプレイした時、もしあなたのライフが相手よりもが少ない場合は、+1[attack]を得る。

ハミルトンの実績こそが、彼の理論の正当性の証明になっていると筆者は考えています。

参考:

ルールオブ8の欠点

ハミルトンによればルールオブ8は実践的ではなく、個人的には使用していないとのこと(参考)。理由としては、ブルーカードをデッキに入れるのは3点のリソースを生み出すためで、レッドカードはカードをブロックかプレイした時の価値で決めている。

具体的な例として、ハミルトンがあげたのはデフェンスリアクションの模範的なカード、Sink Below。防御に特化したカードだからこそ、このカードには価値がありデッキによってはこのカードが重要になる。

このカードが、もし単純にルールオブ8に沿って攻撃力に2が加わり、代わりにブロックが2になっていたら、Sink Belowは全く違うカードになってしい、その使用価値すら無くなるかもしれない。

多くのカードに3色のバリエーションがあるが、どれもデザイン価値は8点。しかし、各色のバージョンを選ぶ理由があることもルールオブエイトが実践向きのカード評価数値ではないことがわかると思います。

ハミルトン式・表現価値

FAB世界初王者のマイケル・ハミルトンは独自の表現価値理論をもっていて、今回はこの理論を勝手にハミルトン式表現価値と呼ばせてもらいます。

カード表現価値

彼の理論自体はとてもシンプルで、彼自身がホストを務めるポッドキャスト M-n-Rとゲストとして呼ばれたアーセナルパスのインタビューで語られています。

カードの表現価値を決めるのは、そのカードが相手にどれだけの攻撃を試みたか?または、相手の攻撃からどれだけのダメージの軽減できたか?の2点のみをみて決まります。

これだけ聞くと、当たり前のように聞こえますが、奥が深くシンプルに捉えたからこそ実践に役にたつ理論となっています。総合価値と違うのはカードの4角の数値とテキスト効果を足したり・引いたりするのではなく、純粋にカードを使用した・使用する予定の時に得られるカードの攻撃またはブロック価値だけを見ているところです。このゲームの勝敗は純粋に自分のライフより先に相手のライフを0点にすることなので、最終的に互いのライフ数値への影響があること以外は表現価値に関係がないということになりますね。

相手にどれだけの攻撃を試みたか?または、相手の攻撃からどれだけのダメージの軽減できたか?

ハミルトン式・カード表現価値の定義

Scar for Scarをプレイした時、もしあなたのライフが相手よりもが少ない場合は、Go Againを得る。

例えば、レッド版・Scar for Scarでブロックしたなら2点分の表現価値ですが、攻撃に使用したなら4点分になります。

性質① 攻撃による表現価値は与えたダメージ数値ではなく攻撃時の数値

攻撃に使用したカードは、相手のライフを削れなかったとしても表現価値としてはカウントします。理由としては、相手がライフを守った代わりに、カードや装備など別のリソースを使用しているからです。

性質② オーバブロック分は表現価値にカウントしない。

もし、2点ブロックを持つScar for Scarで相手の1点攻撃をブロックしたとしたら、その場合は実際に防いだダメージは1点のみなので表現価値は1点となり、非効率的なブロックとなります。

性質③ ピッチ・リソースは1点分の表現価値を秘めている。

ハミルトン式表現価値ではピッチ・リソースそれ自体はカウントされません。

例えばブルカードをピッチしても、1点分のリソースしか使わなければ残りの2点分のリソースはゲームの進行に全く何も貢献せずに終わってしまうと考えると、リソース生成ではなくリソースの使用方法の方に価値があることがわかります。

しかし、ピッチしたリソースを攻撃またはブロックに使用できる場合は平均してリソース1点に1点分の表現価値があります。

例としてGenericバニラカード4枚を比較するとコストが1点上がれば攻撃力も1点上がっています。

性質④ アクションポイントは、1点分の表現価値を秘めている。

アクションポイントもリソースと同様にそれ自体には表現価値はありません。ただし、アクションポイントを使用したと考えると平均的にアクションポイント自体には1点の表現価値があります。

例としてHead JabとWounding Blowの2枚を比べてみます。Head JabはGo Againがついているので、使用にアクションポイントが必要でもそれ自体はアクションポイントを消耗しないカードです。Head JabとWounding Blowのプレイを比較したとき、どちらも0コストのGo Again以外はテキスト効果なしですが、アクションポインを消耗するWounding Blowには1点分多い攻撃数値があるのでアクションポイントが1点分の表現価値に換算されているとわかります。

ターン・イニング表現価値

各ターンにおけるターン表現価値、または相手のターンと自分のターンを合わせたイニング表現価値は、それぞれのターンまたはイニングにおける自分の手札全てのカードの表現価値の合計値になります。

You goal is to maximize the value per card you get while minimizing your opponents.

自分の各カード表現価値を最大限に生かしながら、相手のカード表現価値を最小限にする。

Michael Hamilton

そして、ハミルトンの名言が「自分の手札にくるそれぞれのカード表現価値を最大限に生かしながら相手のカード表現価値を最小限にする」ことがFaBの基本的な戦略と発言したことです。個人的には、FaBの極意ともとれる深い発言です。

サンプル手札として挙げられたのが上の4枚です。

1つの手札の使用方法としてブルーカード2枚をそれぞれ3点のブロックに使用。自分のターンでGo Againの条件を満たしていると仮定したシチュエーションで、Scar for Scarで攻撃。次にSnatchを使用。6点のブロックと8点の攻撃でイニング表現価値は14点となります。

Earth Fusion

このターン中あなたのアタックアクションカードの攻撃がヒットする度に、もしその攻撃力がベース攻撃力よりも高ければ、カードを1枚引く。

もし、Force of Natureが融合された場合、あなたのこのターンの次のアタックは+1の攻撃を得る。

Go Again

別の手札の使用方法の1つはForce of NatureをEarth Fusionして使用。次にGo again付き5点のScar for Scarで攻撃。最後に、Snatchを使用。ブロックには1枚も使用しなかったので、自分の攻撃ターン表現価値はイニング表現価値と同じで、合計9点。ただしAutumn Touchは手札に残るのでアーセナルに入れることも可能。

⚠︎Force of Nature効果やSnatchによる条件付きドロー効果の発動は相手が効率的にブロックしたと仮定して、無視する。

Autumn Touchはアーセナルには向かないカードなので、2枚ブロック・2枚攻撃の方がイニング表現価値が示した通り正しい一手となります。

平均表現価値

では、実際どれくらいの表現価値があるデッキが強いのでしょうか?

効率的に各イニングで手札カード4枚全てをつかいきるのが理想的なので、4枚全てを使うと考えて計算します。

それぞれのカードが平均3点の防御、そしてアクションポイントを1点分の価値と考えると4枚のカードの表現価値合計は3×4 +1で13点となります。

例えば、相手の攻撃を3枚のカードでブロックして手札に1枚だけ残ったWounding Blowでアクションポイントを使って攻撃すれば9点ブロック+4点アタックで13点になりますね。

同様に2枚のカードでそれぞれ3点ブロックし、ブルーカードをピッチして、Raging Onslaughtで攻撃したならこれも13点。

リミテッド環境では安定してこの13点のイニング表現価値(平均カードEV3.25点)を出せるデッキは強いそうです。

しかし、構築環境となるとシナジーやコンボなどを組み込むので、競技用トップレベルデッキでの各ターンの平均はさらに上の数値が必要となります。具体的にどのくらいかというと、現時点ではトップクラスのアグロデッキを見ると安定して各ターン平均14点以上のEVを出せるそうで、中にはターンEV・15〜17ということも珍しくはないようです。

具体的な例として、ハミルトンはトップアグロデッキの一角であるBriarのそこそこいい手を分析しています。

フュージョンをしたBramble Sparkで、3点物理攻撃強化と1アーケンダメージで計4点分のダメージ。

次にEarthlore Surgeを使用してさらに+5点分のダメージ強化。ただ、Earthlore Surgeは2点のリソースがかかるので手札の一枚はブルーピッチとしてして使用。

最後の1枚は攻撃に特化したレッドカードでSnatchなどの0コスト4点アタックアクションカードを使用。

Snatchの条件付きテキスト効果は無視するとして、Briarのヒーロー能力によりEmbodiment of Lighteningが場に出ているので、SnatchはGo againを得ています。

よって、最後に残ったリソース1点を使ってRosetta Thornで、それぞれ2点の物理とアーケン攻撃でターンを終了。

合計すると4枚のカードで17点のターン表現価値・1枚平均4.25ダメージのEVとなります。

ハミルトン式表現価値の定義

定義: 相手にどれだけの攻撃を試みたか?または、相手の攻撃からどれだけのダメージの軽減できたか?

性質① 攻撃による表現価値は与えたダメージ数値ではなく攻撃時の数値
性質② ブロックによる表現価値は実際に防いだダメージ分のみカウントする。
性質③ ピッチ・リソースは1点分の表現価値を秘めている。
性質④ アクションポイントは、1点分の表現価値を秘めている。

平均カード表現価値平均ターン・イニング表現価値
リミテッド3.2513
構築3.5+14+
*平均値通りなら、オンレート

ハミルトン式表現価値の使用方法

実際にハミルトン式表現価値を使ったプレイ方法としては、 

  1. まず、手札のカードで最も高い表現価値を出せる手段を計算する。
  2. もし相手の攻撃にオンヒット効果がある場合は、その効果が発動したときの表現価値を計算する。
  3. 2つのシチュエーションを比較して、最終的に自分のイニ表現価値を最大限にしながら、相手の表現価値を最小限にする。

とても理にかなっている上に、シンプルに聞こえますが実際にプレイしていてこの思考に辿り着いている人はハミルトン以外で何人いたでしょうか?経験から無意識に似たような思考に辿り着いてるトッププレイヤーはたくさんいると思われますが、半年近くカジュアルにプレイしている自分にはたどりつけなかった境地です。

応用

ここからは、ハミルトン式表現価値を使っていくつかのカードの表現価値を見てみましょう。

Command and Conquer (C&C)

まずは、現在ゲーム中のマジェスティックレア度のカードとしては最高額のCommand & Conquerです。

ディフェンスリアクションは、Command and Conqureのチェーンリンクでは使用できない。

もし、Command and Conqureがヒーローにヒットしたならば、そのヒーローの全てのアーセナルカードを破壊する。

ハミルトンの見解では、このカードの価値自体は2枚のカードで6点攻撃。アーセナル破壊については、状況によってその価値が大きく変わるのでそれ自体の価値はないという発言をしています。カードデザイン価値から見ても、C&Cのテキスト効果は0点の価値という判定になっていました。

表現価値の観点から見ると、例えば相手がガーディアンクラスなら、2枚の3点ブロックによる完全ブロックは計算のうちで、アーセナル破壊は発動せず、相手のイニング表現価値にも影響がない場合が多く起こります。結果的にテキスト効果の価値は実際になかったということになります。それでも状況が変わればアーセナル破壊は強力な効果でその価値も大きく変わります。

しかし、ハミルトンが開発したUSナショナルとワールドチャンピオンシップで優勝したミッドレンジアーキタイプのIyslanderデッキでは、C&CではなくWounded Bullなどのカードが搭載されていました。

Wounded Bullをプレイした時、もしあなたのライフが相手よりもが少ない場合は、+1[attack]を得る。

Wounded BullはC&Cよりも1コスト高いのですが、ブルーピッチの多いIyslanderデッキではどちらも基本的にはプレイカードとピッチカードの2枚のカードを使う攻撃となっていて、相手が同様に2枚でブロックした場合はWounded Bullなら1点または2点のダメージを相手に与えることができます。

Iyslanderデッキにはすでに複数の妨害系カードが搭載されているので相手のアーセナル状況によりその価値が大きく変わるC&Cより、Wounded Bullの方が安定して・平均的より高い表現価値があるカードと判断されたそうです。

BelittleとMinnowism

最強のGenericコモンカードペアBelittleとMinnowismをみてみましょう。

Belittleをプレイする追加コストとして、あなたはアタックアクションカードでベース攻撃力3以下のカードを手札から公開してもよい。もしそうしたならば、あなたのデッキからMinnowismという名前のカードを探して、公開しま、あなたの手札に加え、デッキをシャッフルする。

Go Again

次のベースアタックが3以下のアタックアクションカードは+1[attack]を得る。

Go Again

総合価値の8点ルールからみるとBelittleのMinnowismドロー効果は1点分の価値という計算になっています。条件付きで特定のカードを手札に追加できるのは強力な効果だとわかり、TCGに慣れているプレイヤーなら1点分以上の価値があるだろうと感じるかもしれませんが具体的な価値はわかりにくいのではないでしょうか?

ハミルトン式表現価値を使って検証してみると、ブルーMinnowismを手札に加えた場合は、1点のピッチを払って3点戻ってくる計算になり、Belittleは実質-2点のリソースでプレイできたカードになります。これだけでもかなりレートが高い感じがしますが、個人的にさらに深く掘り下げてみました。

BelittleレッドはGo Againがあるので、3点攻撃なら0コストでオンレートとなります。これが-2コストなので0コスト5点攻撃の超高レートカードになる計算になります。

では、もしブルーではなくレッドMinnowismで攻撃強化のシナジーならどうでしょうか?レッドMinnowismは+3[attack]なので、1コストのBelittleは6点分の表現価値の攻撃があることになります。通常1コストGo Againカードなら4点攻撃がオンレートなので、これまた超高レートカードになっています。

もちろん、実戦では最初にブルーピッチでBelittleを使用したなら残りの2点のリソースをうまく使う方法や、Minnowismをプレイするなら対象となるカードが手札に残っていることや、直接手札にMinnowismをひいてしまった時のシチュエーションで上の価値がフルで得られないことも運次第ではあります。

Art of War

総合価値を使った計算では、Art of Warは3連撃以上できれば高レートカードになると解釈しましたが、ハミルトン法ではどうでしょうか?

2つ選択します。

  • あなたのコントロールするアタックアクションカードは、このターンで+1攻撃と+1防御を獲得します。
  • このターンでプレイする次の攻撃アクションカードは、Go Againを得ます。
  • ターンの終わりまで、あなたはアーセナルのアタックアクションカードで防御することができます。
  • アタックアクションカードを1枚手札から追放する。もしそうしたならば、2枚のカードを引く。

追放、2枚引き効果はArt of Warと追放したカード分を補うので、実質1点のリソースでこのターン中プレイする全てのカードに+1点攻撃を追加することになります。1点リソースは平均的に見ると1点分の攻撃力なので、1枚カードをプレイするだけで表現価値分の効果は得らる計算となり、2枚目以降は全てカードのレート以上の計算になります。

Art of Warを搭載しているデッキは基本連撃を得意とするアグロデッキなので、各ターン3〜4回の攻撃は珍しくなく、1点のリソースで4点分の表現価値を得られることも頻繁に起こるモンスターカードだとわかります。ハミルトンはArt of Warゲーム中でトップクラスのハイレートカードと評価しています。

Intimidateの価値

あなたのターン中に、あなたが6点以上の攻撃を持ったカードを捨てた時、Intimidateする。

(対象のヒーローはランダムでカードを1枚手札から追放する。終了フェーズの開始時に、こうして追放されたカードを全て元のオーナーの手札に戻す。)

総合価値では、Brute(ブルート)専用のキーワードIntimidateには点数的な価値がないと判断されました。ハミルトン法を使って同様の判断が下されます。ただハミルトンの説明の方が納得できました。

ハミルトン法でみると意図的にブロックに使うカードを複数搭載しているデッキに対しては強力でも、元々ブロックよりも攻撃で表現価値を最大限にを発揮する相手にはIntimidateは無意味だということが一目瞭然です。

例えば、ディフェンス専用のSink BelowをIntimidateされた場合は自分のターンに持ち越してもアーセナルに入れるかピッチするしかなくなり4点のイニング表現価値が相手は奪われたことになります。

これに対して、もしBrand with Cinderclawのような元々攻撃に特化したカードがIntimidateされても、このカードは攻撃で表現価値が3なのに対してブロックでは2だけなので、このカードは基本的にブロックに使うべきではありません。よって、Intimidateされてもプレイヤーとしては痛くも痒くもないカードとなります。

では実際に、デフェンスと攻撃カードどっちの方にIntimidateが当たる確率があるかと言えば、構築環境のメタ全般を見ても、大半のデッキは多くのターン4枚全てのカードを手札に残して自分のターン中に使うことで真の効果を発揮するものが多いため、圧倒的に攻撃カードに当たることが多くなっています。

いつかブロックを中心とした消耗型コントロールデッキが主流の環境になったらIntimidateの価値が上がるということですね。

Alpha Rampage

ブルート繋がりで、ハミルトンはRhinar専用攻撃Alpha Rampageもハミルトン法で分析しています。

ライナー専用

Alpha Rampageをプレイする追加コストとして、ランダムでカードを1枚捨てる。

Alpha Rampageで攻撃する時、Intimidateを行う。

コストを支払うためにブルーピッチ1枚、追加コストの手札捨てで1枚。Alpha Rampageの使用は、合計3枚のカードとアクションポイントが必要です。構築なら平均カードEVは3.5が目標なので、3枚のカードなら10.5点分の表現価値が欲いところ、9点のダメージと大半の場合、価値のないIntimidateが最低一回、ライナーの能力が発動すれば二回付きとなっています。よって、ハミルトンはライナーはメタ環境では苦戦すると公言していました。

Crippling Crush

最後に1枚、筆者自身でハミルトン法を用いてCrippling Crushの表現価値を見てみます。

ブラボー専門

クラッシュ – もしCrippling Crushが4点以上のダメージをヒーローに与えた時、そのヒーローはランダムで二枚のカードを捨てる。

Crushキーワードの総合価値は8点ルール的には0点と判断されました。個人的には、納得いかない数値でした。

まず、Crippling Crushの高コストを支払うにはいくつかの方法があり、それによりCrushの価値も変わります。今回比べるのは2種類の方法です。1つ目はブルーピッチ3枚、もう一つはブルーピッチ2枚+Seimic Surgeトークンです。

ブルーピッチ3枚で、余ったリソース2点を使ってBravoヒーローの能力を発動させてた場合は、Dominate付き11点攻撃を4枚カード+アクションポイントで行うことになります。Dominateがついた状態で7点以上のブロックはほぼ不可能なことを考えて、クラッシュ効果で2枚カードを捨てさせることになります。

競技レベルで作成されたデッキでの平均カード表現価値が3.5と考えると、ランダムで2枚捨てさせた場合は、このターンと相手の次のターンで使用するはずだった表現価値6〜8点の攻撃またはブロックを奪ったことになるので、結果的にはイニング表現価値・17~19点の攻撃となっています。これは平均イニングEV14を上回る高レートターンとなりますね。

もし、1枚のカードを3点ブロックとして使い、自分のターンではSeimic Surgeトークンを使ってブルーピッチ2枚のDominateなしで攻撃したと場合のEVは14点てオンレートとなります。この攻撃に対して、相 手側は3枚ブロックで9点分の表現価値を使い、自分のターンで3〜4点分の攻撃をしてくればわずかに平均EVに届かないターンとなるだけでほぼ引き分けのターンとなります。

感想

ハミルトン式の表現価値は、一見するとシンプルなのですが奥が深くFlesh and Blood特有のゲーム構造を理論的に説明できた現状唯一の方法だと思います。個人期には、初めて聞いた時、TCGとしてはかつてない衝撃を受けました。

ゲームを始めて半年近く立ちましたが、初プレイ直後から「神の一手」を探すような気分で常に最善の一手を模索し続けられることはFABの最大の魅力だと個人的には思っています。毎ゲーム・毎ターン可能な限りのプレイパターンを考えているつもりです。しかし、互いのライフ値、相手の手札の可能性など気づけば変数がありすぎて思考が定まらず、試合の勝敗に関係なく後になって必ず「間違えた」と言えるターンがいまだにあります。

ハミルトン式表現価値の存在を知ったことで、これからは集中したゲーム分析ができるようになる気がします。もちろん、実践中に互いのイニング表現価値を計算して比べる続けるには、ある程度自分の手札のパターンとそれぞれの生み出すイニング表現価値を把握しながら、既存メタも頭に入れて、これらのバランスを瞬時に毎ターン試合中に計算していかなくてはいけないので、理論は理解してもうまく使いこなせるようになるには反復練習と努力が必要になります。FABがスキル重視のゲームだと理論的に実感できました。

ハミルトン式表現価値はブロックの仕方、理想のデッキ内カラーカード分布、デッキ構築、デッキアーキタイプやプレイスタイルの判断、誰が実際にゲームのテンポを握っているのかなど本当にさまざまな面でFABのゲーム分析に役立つ究極のツールだと感じました。!

参考

2 Trackbacks / Pingbacks

  1. 【FAB・理論】テンポと主導権 – Game & Technology Focus (日本語版)
  2. 【FABrain】ブロック理論 〜教訓編〜 – Game & Technology Focus (日本語版)

Comments are closed.