【FABrain】ブロック理論 〜教訓編〜

今回はなるべく効率の良いブロックができるようになるために、理論的にFAB流のブロック思考法について考察していきます。経験が足りない、FAB勘が磨かれていない、カジュアルやセミプロプレイヤーは今より1段上のブロックが可能になるかもしれません。

用語

  • 表現価値(EV): それぞれのカードが相手にどれだけの攻撃を試みたか?または、相手の攻撃からどれだけのダメージの軽減できたか?の数値です。
  • テンポ: FABのテンポとは表現価値です。上に何もつけずにテンポを書いた場合は、イニング表現価値を指します。ゲーム全体のテンポは、それまでの互いのプレイヤーのイニングテンポの差です。

前置き

「ブロックを制するものはFABを制す」と言っても決して過言ではないほどフレッシュアンドブラッドTCGにおけるブロックの技術は重要です。実際にFAB業界では最も有名な攻略情報サイト・The Rathe Timesの“10 Mistakes we’ve All Made”(誰もが通る10個の間違い)の記事では10点のうち4点がブロックに関することでした。

相手の攻撃をカードを使ってブロックするということは、その分自分の攻撃ターンでの手札が減るということになります。これはデッキによっては、テンポ(イニング表現価値)が失われることにつながります。そしてこの判断は単純な2択ではなくブロックするならどれだけ?どのカードを使って?どのタイミングで?と考えれば考えるほど奥深く、他のゲームなら相手のターンという認識のはずのデフェンスターンの中に、無数と思えるほどの選択肢が存在しています。実際のゲームを振り返ってみると手札の引きよりも、ブロックの判断ミスに関する後悔の方が多いと筆者は感じています。

今回の記事を書くにあたって筆者がたどり着いたのは、FABのブロックに神の一手があるとすれば、それはデッキのブロック戦略を理解した上で、自分と(予測される)相手の手札を元に各イニングのブロック戦術を決め、それぞれのブロックを効率的に行えた先にあるということです。

さてこの意味がどういうことなのか、今回はFAB流ブロック思考について考察していきます。

ブロック効率

各カードはブロックに使用する時、ブロック効率を考えることが重要になります。単刀直入に言えば、「非効率ブロックをせずに効率的なブロックをする」です。

  • 非効率なブロック
  • 通常ブロック
  • 効率的なブロック

非効率ブロック

正しいブロックの方法を考えるならまず、誤ったブロックを知る必要があります。FABにおける非効率ブロックとは、ブロック数値分をフルに使いきれていない『オーバーブロック』です。

例えば、1点の攻撃を3点カードでブロックすることは2点分のオーバーブロックとなります。表現価値の性質の一つが「オーバブロック分は表現価値にカウントしない。」とあるため、3点分のブロックを持つカードを1点ブロックに使用時の表現価値は1点となり、表現価値の可能性を下げています。よって、テンポ(イニング表現価値)が下がる使い方となります。

ただし、一見非効率ブロックでも戦術的に使用されることもあります。相手のアタックリアクションを警戒したブロックがその1例となります。

通常ブロック

PARTIAL BLOCKING “TO TAKE THE EDGE OFF”

ダメージを減らすために、一部だけブロック。

FULL BLOCKING WITHOUT A REASON

理由のないフルブロック

The Rathe Times “10 Mistakes we’ve All Made”(誰もが通る10個の間違い)より

カードの持つブロック表現価値(Expressed value/EV)をフルで出せたからといってもそれが最善のブロックとは限りません。4点の攻撃を3点でブロック、3点の攻撃を3点でブロックどちらも3点ブロックカードの持つブロック表現価値をフルに出せています。

しかし、これらの場合はお互いのテンポを打ち消しあっているだけでテンポへの影響がないブロックになっています。

効率的なブロック

理想的なブロックとはカードに表記されたブロック数値の持つ表現価値以上の、効率的なブロックとなります。そして、効率的なブロックとはオンヒット効果を防ぐブロックです。

オンヒット表現価値

オンヒット効果とは対象にダメージが与えられた時にのみに発動する効果です。オンヒット効果が秘めた表現価値は、一定ではなく状況によって変わります。よって、効率的なブロックを行うためにはオンヒット効果の表現価値を計算できることは絶対必須なスキルです。

具体的にいくつかの例をみてみましょう。

もしSnatchがヒットしたなら、カードを1枚引く。

まずは、ハミルトンが実際に例として挙げたSnatchを見てみます。ドローカードには、高い価値がありそうですが…

表現価値3点のドロー

もし、引いたカードがそのターン中に使用またはアーセナルに設置できる状況なら、引いたカードの表現価値自体がオンヒット効果の価値になります。ただ、実際にどのカードを引くのかは運なので平均的に考えることになります。ハミルトンによれば1枚のカードが持つ平均的な表現価値は3点ということで、この状況ならオンヒットが発動すれば平均3点の表現価値を相手は得るという計算になります。

表現価値0のドロー

しかし、もしアーセナルに既にカードが置いてあり、Go Againを得る方法がなければSnatchのオンヒット効果で引いたカードは、単純にエンドフェーズで引くはずだったカードの1枚を一瞬早く引いただけになります。例えば手札を使い切った状態なら、エンドフェーズに4枚引くはずだったカードを1枚先に引いてその後すぐに残り3枚引くだけで結果としては何も変わりません。よって、この場合ドローカードのオンヒット効果の価値はありません。

Command and Conquerのチェーンリンクには、ディフェンスリアクションをプレイできない。

もしCommand and Conquerga相手のヒーローにヒットしたならそのプレイヤーのアーセナルにある全てのカードを破壊する。

次に、人気のC&Cの持つオンヒット効果・アーセナル破壊を見てみましょう。

アーセナルに何もカードがなければオンヒット効果の価値はもちろん0です。もしアーセナルにカードがあるならオンヒット効果は、アーセナルにあるカードの表現価値となります。

Rupture – もしLava Burstがチェーンリンク4以上でプレイされたなら、これは+3[attack]を持つ。

ファイデッキの代表的なターンクローザーカードのLava Burstがアーセナルに置いてある場合、Rupture付きLava Burstの攻撃力は5点(Tiger Shuko Stripeがあれば6点)なので、C&Cのオンヒット効果にはこの分の攻撃を防いだことになるので、5〜6点の表現価値となります。

もし、アーセナルのカードがRonin Renegadeなら、その価値は3点分となります。

Crush – もしSpinal Crushが4点以上のダメージをヒーローに与えたなら、そのプレイヤーの指揮下にあるアクションカード、発動アビリティとアタックは次のそのプレイヤーのアクションフェーズ中はGo Againを失い、新たに得ることもできない。

Crush効果もオンヒットの一つで、その違いはCrush効果はフルブロックではなく3点以下にダメージを抑えれその効果は発動しないという点です。例えばSpinal Crushの9点攻撃は6点ブロックできればそのオンヒット効果はブロックしたことになります。

オンヒット効果の価値の計算の仕方が分かったので、実際に効率良いブロックを見てみましょう。

まずは、ドローカード効果付きのレッドSnatchとテキスト効果なし(バニラカード)のWounding Blowを比較します。状況としてはアーセナルが空いていると仮定します。

どちらもカード自体が提示している攻撃による表現価値は4点ですが、Snatchの方は当たればドローカードにより平均3点分の表現価値が加わるたり、そのカードがアーセナルに設置されるので、以降のターンで相手がテンポを得やすくなり、オンヒットありなら実質7点の表現価値攻撃となります。

もし、これらのカードを4点ブロック数値を持つレッドSink Belowでブロックするとイニング上に得られる表現価値はどちらも4点ですが、Snatchをブロックしていなかった場合は、以降のターンで相手がさらに平均3点分の表現価値を得ることになります。つまり、カード単体ではなくゲームを通してみた時の総合表現価値、またはゲーム全体のテンポを比べた時に数値に差が出ます。

つまり効率的なブロックとは、表現価値のあるオンヒット効果をブロックした時にゲーム全体を通して見た時にテンポを変える力があり、カードに記載されているブロック数値以上の価値があるということです。

教訓① カードブロックは効率良く

ブレイクポイントの価値

FABの概念でブレイクポイント(Break Point)と呼ばれものが存在します。ブレイクポイントの正式な定義が存在するかは不明ですが、筆者が定義するなら「平均的ブロック値+1の攻撃値」となります。

ブレイクポイントを持つカードの攻撃を、平均的なブロック数値のカードのみでブロックすると1点分ブロックしきれずダメージを受けることになります。

ブレイクポイントとは、平均的ブロック値+1の攻撃値

FABにおける平均的なカード(バニラカード)のブロック数値は3点なので、カード1枚のブレイクポイントは4点です。

ブルーピッチ(3点リソース)+使用カード1枚による2枚カード攻撃なら2×3+1=7点。

ブルーピッチ2枚(6点リソース)+使用カード1枚による3枚カードの攻撃なら、3×3+1=10点。点になります。

ブレイクポイント値による攻撃の重要性は、そのダメージをカードのみで完全にブロックしようとすると非効率ブロックになってしまうという点です。しかし、ブレイクポイント自体には表現価値はないとアーセナルパスのインタビューでハミルトンが公言しています。

まず一つの例としては、Wounding Blowによる攻撃です。ブレイクポイント値の攻撃ですが、これを1枚カードを使って3点ブロックして残りの1点のダメージを受けても、それは純粋に攻撃とブロックのEVの差分のみでブレイクポイントに特別な追加価値しかありません。

次にSnatchの例をみてましょう。

Snatchレッドとイエローを比べてみると、3点攻撃のSnatchイエローによるオンヒット・ドロー効果は平均的な3点ブロックカード1枚で防げます。しかし、ブレイクポイント値をもつSnatchレッドのオンヒット効果を平均的な3点ブロックカードのみで防ごうしとした場合は、2枚必要になり6点のオーバーブロックによる非効率なブロックになってしまいます。

ただし、レッドSnatchのブロックが常に非効率かというそうではなく、状況によりブロック効率は変わるのでブロック側の観点から考察してみました。

①ワンカードブロック

あなたは手札のカード1枚をデッキの一番下に戻しても良い。もしそうしたならば、カードを1枚引く。

まずは互いに1枚ずつのカードを使うことになる、Sink Belowレッドによるブロックです。この場合は、Wounding Blowなどバニラカードをブロックしたのと同様に完全ブロックでドローカードも発動せずにブレイクポイントに全く意味がないことになります。

⚠️実際は、Sink Belowを使ったブロック側としては、相手のカードアドバンテージによるテンポを得る攻撃をブロックしたので(平均7点分)効率の良いブロックとなります。

②非効率ブロック

もしドロー価値のない状況で2枚のカードを使ってブロックした場合は、明らかな非効率ブロックとなります。

この場合攻撃側の観点で見ると、カードドローはできなかったもののブロック側が2枚のカードを使用したことで、相手は1枚攻撃カードを失ったことになります。ブロック側は1点分のテンポ(ダメージ)を防いだ代わりに、自分は平均3点分(カード1枚の価値)のテンポを失ったことになります。テンポから見ると合計で2点損していることになりますね。

③状況によって価値が変わる、2枚カードのフルブロック

ややこしいのが、もしドローされたカードがアーセナルに追加できたり続けて使用できる場合は、ブロックしなければ相手にテンポを与えることになるという状況での2枚カードブロックの効率です。

この時に重要なのは個別のカードEVで計算するのではなく、イニングEV=テンポを計算することです。

オンヒット効果が発動した場合、平均で攻撃側は3点の追加表現価値を得ることになります。これにSnatchの攻撃を合わせると合計で7点のテンポをもつ攻撃となります。よって2枚のカードを攻撃やピッチなどブロック以外の方法で使用することで得られる合計テンポ値が7点以上なら、こちらはその差の分テンポを得られる計算になります。しかし、7点以下だとしたら2枚のカードを用いてフルブロックすることは相手にテンポを与えなかった効率的なブロックとなります。

例えば上の2枚の手札を使ってブロックするべきか、しないべきかで悩んだいたとします。2枚のカードをブロックではなく攻撃用に温存した場合は、5点のオフェンス表現価値を得ることができます。しかし、Snatchレッドが当たることで相手は平均7点分のテンポを得るので、結果的にテンポの差(イニング表現価値の差)でみると、ブロック側は2点分のテンポを失うことになります。

もしこの2枚をブロックに使った場合は、お互いに打ち消しあってスナッチと上の2枚からはお互いにテンポを得られません。よってこの場合はテンポで比較するとわかるように、2枚をブロックに使用した方が正解となります。

違う2枚のカードだと答えも変わります。ブロックに使用した場合はお互いが3枚のカードからテンポを得ることはないので上の例と同じになります。しかし、もし2枚を温存して攻撃に回した場合は、この2枚だと8点分のダメージを提示できます。よって相手がドローしたとしても平均的にはこちらが1点分のテンポを得る計算になります。

このように考えると、Snatchレッドというカードはブレイクポイントに価値があるのではなく状況に応じて対応しなくてはいけないのでブロック側のスキルを試すことで、テンポまたは主導権を得られる可能性がある良カードと取れます。どちらもゲームの流れに重要なので、ゲーム初期のセット1のレアなのに今だに複数のトップデッキに含まれている理由が分かった気がします。マジェスティックでも良かったんじゃないかと…

装備ブロック

EQUIPMENT BLOCKING WITHOUT A REASON

理由なき装備によるブロック

The Rathe Times “10 Mistakes we’ve All Made”(誰もが通る10個の間違い)より

Instant – {r}, Storm Stridersを破壊する: このターン中、あなたは次のウィザード・ノンアタックアクションカードをインスタントとして使用しても良い。

Arcane Barrier 2

FABの戦略で最も重要なカードタイプはと聞かれたら、迷いなく装備カードと答えます。運の要素がない装備品は、再現性の最も高いカードでデッキのプレイスタイルやサイドボードの鍵となります。

Blade Break (もしあなたがIronrot Gauntletで防衛したなら、コンバットチェーンが閉じる時にこれを破壊する。)

戦略の鍵となる効果だけではなく、多くの装備品には平均1〜2デフェンス値が付いてます。実質的なゲーム開始時のヒーローライフはヒーローに記載されているライフ+装備品のディフェンス値合計と考えることもできます。

⚠️アーケイン攻撃は別です。

装備品ががブロックで得る表現価値は、カードのブロック数値と同じ記載された数値分のみです。しかし、ゲーム開始時からその使用まで、いつでもプレイヤーの好きなタイミングで行える装備ブロックは、ゲームを通して個々のカードブロックよりも遥かに効率良く使用できる機会が存在します。よって、装備によるブロックは原則効率的なブロック以外は行うべきではないと筆者は考えます。

さらにBlade BreakやTemperキーワードを持つ装備品は、使用後に破壊されてしまうので装備自体の持つ効果とその瞬間のブロックの価値を天秤にかける必要もあります。

例えばブレイクポイントを超えたオンヒット効果付きの攻撃の対処法としては、カード1枚と1点防御の装備を使って合計4点という方法が頻繁に使われます。カード1枚を温存できることと、相手のオンヒット効果を防ぐことでブロック数値よりも遥かに価値のある効率良いブロックとなります。

各ターンあなたがプレイする2枚目のベース[attack]が2以下のアタックアクションカードは+1[attack]と”このカードによるダメージは無効化できない”を持つ。

Blade Break

例えば、Tiger Stripe Shukoの効果は1度発動するたびに1点分の表現価値を得たことになります。通常のファイの試合だと2〜3回は発動するので、その効果だけで2〜3点分の表現価値があると言えます。

ゲーム序盤でTiger Stripe Shukowをブロックに使うと、その後ゲーム中で得られたであろう2~3点分の攻撃表現価値も同時に失うことになります。よって、ゲーム序盤で使用するならそのブロックにShukoのブロック値2点と効果の可能性値3点を合わせた5点分以上の価値の攻撃・オンヒット効果を防がないとその価値は見出せないことになります。

しかし、ゲームが終盤に差し掛かってきて互いのライフが残り1回のヒット分になった状態では、すでにTiger Stripe Shukoの+1は関係なく、Shukoをブロックに使うことで手札の1枚のカードを温存できるならゲームの主導権を得られる可能性出るのでその価値は勝敗を分けるほどになります。

よって、装備品によるブロックは、そのカードが生み出すであろう残りの試合での表現価値を考慮した上で、効率良く。

教訓② 装備ブロックはその効果の表現価値を考慮した上で、効率良く。

ブロック戦略

ここまでは、ヒーローやデッキのプレイスタイルに関係なくブロックをするなら効率良くと一般的なブロック方について考察してきました。ここからは経験とより高度な思考が必要となりますが、それぞれのデッキのプレイスタイル=戦略を考慮したブロックについて考察していきます。

TCGのデッキには言わずと知れたアグロ、コントロール、ミッドレンジ、コンボなどとアーキタイプやデッキプレイスタイルが存在します。FABではデッキのプレイスタイルに関係なく、全てのプレイヤがーデフェンスとオフェンスのターンを交互で行うことになります。

自分のオフェンスのターン終了時にカードをドローするFABのゲーム構造は、この二つのターンを戦略的に絶妙に繋げています。オフェンスターンでプレイスタイルを実践したい場合は、ブロックターンでそのためのカードを温存しなくてはいけません。つまり、プレイスタイルを遂行するということは、デフェンスターンで正しいブロック戦略を遂行することが大前提となっているのです。

例えば現状ファイのプレイスタイルは、とにかく攻撃の完全アグロアーキタイプです。ブロック戦略から見ると、基本的には「ブロックせずに手札は全て攻撃用に温存」となります。

上の3枚のDraconicカードを見ても分かるように、ファイに使用されるカードの多くが平均2点のブロックとなっています。つまり、ブロックを選択することで自然にカードの表現価値が下がるようになっていて、ファイは大半の場合それぞれのカードを攻撃に使うことでテンポを最大することができます。

アグロ系デッキとは対極上にある、コントロールアーキタイプ、その中でも消耗戦を好むプレイスタイルのガーディアンクラスなどのデッキの基本戦略は、相手のテンポ抑えながらゲームを長引かせ、火力(デッキ内のレッドカード)とスタミナ(デッキカード枚数)が尽きたところで、攻撃に転換して一方的に勝利するというスタイルです。このアーキタイプのデッキは、序盤は戦略的に1枚か2枚のカードでの攻撃が想定されて設計されており、序盤はオフェンスよりもデフェンスに力を入れるブロック戦略を使用します。

デッキのブロック戦略を見誤るということは、同時にデッキのプレイスタイルも見誤っていることになります。例えば、消耗戦を考えて設計されたガーディアンデッキのプレイヤーが誤って、序盤からファイなどのデッキとブロック無視で撃ち合えば、あっという間にお互いのライフは減り、火力で勝るファイの方が先に瀕死のライフゾーンまで相手を追い込めるので、主導権も握られてそのまま負けることになります。

逆にファイプレイヤーがガーディアンの攻撃を序盤から受けながら半端な攻撃を行っていけば、ブロック効率の悪いファイはダメージを少しずつ削られていくものの、相手のライフは一向に減らず徐々に相手とのライフの差が広がり、最終的には相手にダメージを与えられるレッドカードなども尽きて敗北することになります。

互いのデッキのプレイスタイルを熟知した上で行われた、ブロックの一例をみてみましょう。

あなたがStalagmiteでディフェンドする時Frostbiteトークンを攻撃してくるヒーローにのコントロール下で創造する。

ワールドチャンピオンシップ2022年準々決勝、Wesley Dong(米国)Oldhim 対 Pei-Tung Liao(台湾)Briarの一戦でWesley DongはStalagmiteをあるタイミングまで温存しました。

Go again

あなたのコントロールするアタックアクションカードは+3点の攻撃を得る。

Channel Earth – あなたのエンドフェーズ開始時に1点のフローカウンターをChannel Mount Heoricに置木、もし各フローカウンターにつき1枚のEarthカードをあなたのピッチゾーンからデッキの下に戻せなければこのカードを破壊する。

ペイタングが使用していたアグロブライアーデッキのコンボターンはChannel Mount Heroicを中心として発動します。流れとしてはまずチャンネルを設置して次のターン、2連続攻撃に最後ブライアーの武器で4点攻撃。攻撃ターン表現価値20を超えるコンボターンとなります。

この試合の勝敗を左右する最注目点となるのが、オールドハイムがCMHによるコンボターンをどこまで制御できるかでした。デッキ内に3枚積み確定のチャンネルに対抗する手段の1つとして、ドングはStalagmiteを使用しました。

状況:
ブライアーライフ: 28
オールドハイムライフ: 36
お互いのアーセナルにカードあり
フローカウンターを1枚置かれたChannel Mount Heroic
リソースは互いになし

ブライアーの攻撃ターン最初の1手はレッド版Scar for a ScarによるGo Again付き7点攻撃。この時点で、オールドハイムはStalagmiteによるブロックを使用。2点分のオンヒット効果のないカードに対しての一部ブロックでしたが、フロストバイトをつけたことによる効果は絶大でした。次のカードを使用するために、ブライアープレイヤーはカードをピッチしなくてはならなくなりカード1枚分の火力=通常3点分の攻撃がCMHのターンなので6点攻撃を攻撃を失うことになりました。

装備品ブロックを効率良く使用しただけにとどまらず、相手がテンポを得ようとするターンを理解して、それに備えてこのカードを温存しておいた、ゲーム開始前から準備されたブロック戦略の例でした。

教訓③ デッキのブロック戦略を知れ!

ブロック戦術を見誤るな!

ブロック戦略を遂行するためには、その都度ターンごとに変わる状況から判断する具体的なブロック計画=ブロック戦術を正しく行うことが必要となります。

The most common (yet subtle, yet disastrous) mistake I see in tournament Magic is the misassignment of who is the beatdown deck and who is the control deck in a similar deck vs. similar deck matchup. The player who misassigns himself is inevitably the loser. 

マジックのトーナメントで最も多い間違いが、似たデッキ間での試合で誰がビートダウンで、誰がコントロールデッキかという正しい役割の判断の読み間違いだ。間違えた判断を下した方が、必然的に敗者となる。

Who’s the Beatdown?

MTGの伝説の攻略サイトThe Dojoのからのクラシック記事の一つ「Who’s the Beatdown?」です。

例えば、お互いアグロ同士のデッキの試合で、どちらも防御よりも攻撃という基本戦略を遂行しようとした場合、二つのデッキでより序盤の火力が高い方が勝つことになります。しかし、このルールが成り立つのは、序盤の火力が低い方のプレイヤーが、誤ってノーブロックで試合を進めようからです。もし、序盤の火力に劣るプレイヤーが、この試合に限り自分はコントロール役と判断できていれば結果はわからなくなります。

FABではこの判断が毎回自分のデフェンスターンで問われています。つまり、経験豊富なプレイヤーは自分と相手のデッキプレイスタイルの相性、自分の手札と盤面の状況、そして相手のターン行動を予測しながら、どのタイミングで自分がビートダウン(攻撃を優先する)役になるべきかを正しく判断しています。

CHANGING STRATEGY WHILE DEFENDING

デフェンス中に戦略を変更する。

The Rathe Times “10 Mistakes we’ve All Made”(誰もが通る10個の間違い)より

The Rathe Timesによる10個の間違いで紹介された4つのブロックに関連する間違いの最後の一つが、「デフェンス中の戦略変更」でした。

個人的には、この意味はデフェンスターンの途中で思っていたよりダメージが増えてきたから、ブロック戦術を途中で変更しない意味として捉えています。これは決して「一度ブロックしないと決めたらから絶対にこのターンはブロックしない」という意味ではないと考えています。オンラインプレイ中だと後者のようにプレイをしている人を頻繁に見かけます。

お互いに手札が見えない状態なので相手のターン表現価値は推測の範囲を超えず、経験豊富なプレイヤーは相手が出してきた手札によってその都度変化していく互いのイニング表現価値の差を計算しながら、それぞれの攻撃をブロックすべきか否かを判断していると考えます。

教訓④ ブロック戦術を見誤るな!

カジュアルプレイヤーの域を超えていない筆者のオンラインアーモリーからの一戦なので参考としては弱いかもしれませんが1例を書きます。コンボファイのミラーマッチです。

2つ選択します。

  • あなたのコントロールするアタックアクションカードは、このターンで+1攻撃と+1防御を獲得します。
  • このターンでプレイする次の攻撃アクションカードは、Go Againを得ます。
  • ターンの終わりまで、あなたはアーセナルのアタックアクションカードで防御することができます。
  • アタックアクションカードを1枚手札から追放する。もしそうしたならば、2枚のカードを引く。

ミラーマッチなので、基本的にはお互いに手札の引きと先手・後手でどちらがビートダウンになるか決まる試合でした。ファイの場合は基本的に、後手の方が有利なので相手は後手を選択。

先手でしたが最初からAoWが手札に引けたので、アーセナルに設置してターン終了。この時点で筆者が描いていたのは、最初のイニングはノーブロック戦術でテンポを奪われても、次の筆者の攻撃ターン(第3ターン)終了時点でそれ以上のテンポを得て、その後に続く第4ターンで相手は十分な攻撃を提示できなくなり、結果的に第2イニング終了時で筆者が全体のテンポで(大きく)リードして、そのまま逃げ切り勝利でした。

Command and Conquerのチェーンリンクには、ディフェンスリアクションをプレイできない。

もしCommand and Conquerga相手のヒーローにヒットしたならそのプレイヤーのアーセナルにある全てのカードを破壊する。

しかし、第2ターン目の最後に相手がプレイしたのはC&C。オンヒット効果で、ダメージを受ければアーセナルに埋めたAoWが破壊されます。つまり、ターン開始時の予定通りブロックしなければその後に続くターンの予定が狂ってしまいます。数値的には、AoWを失った場合の第3ターンの筆者が提示できる攻撃は10点程度。AoWがあった時は20点を楽々越える予定でした。

迷った結果、筆者はファイの性質上早い段階でテンポを取り返さないとそのまま逃げ切られると思い、AoWを守り、最初の2イニングで奪われたテンポを、第3イニングで取り返す可能性にかけることにしました。この時点で戦略の鍵となるコンボターンが1イニングずれることになるので、筆者はターンの途中ながらビートダウン戦術からコントローラー戦術に変更したことになります。もちろん、最初からコントローラー戦術を選んでいた時に比べて相手に譲ったテンポは大きくなりました。

結果的には、第2イニング終了時点で相手に17点分のテンポをリードされていましたが、続く第5ターンで30点以上のダメージを提示するコンボターンに成功。テンポを取り返しました。

そしてこの第5ターンで、相手は誤った役割を選択したと筆者は考えています。元々17点分テンポをリードしていたので、おそらくそのまま逃げ切ろうとビートダウン役を選択してノーブロックを選んだと思われますが、このおかげで筆者はSalt the Woundも加えたダブルクローズコンボターンを決行するができ、Salt the Woundもその攻撃表現価値をを大きく伸ばしました。

Salt the Woundはこのコンバットチェーンでヒットした各アタックにつき+1{p}を得る。

ファイの爆発的な攻撃ターンであるAoWターンでテンポを上回るのは不可能なので、ここはテンポのリードをいくらか失ったとしても、コントロール役の戦術を遂行して、以降のターンでわずかでもリードしているテンポを使ってそのまま逃げるというのが良かったのではないかと思いました。実際、相手が次のターンで筆者に提示してきたダメージEVは15点。正直、ノーブロックの時はAoWのコンボターン返しがくるものと想定していました。

この時点で筆者が逆転していくらかのテンポを得たので、そのままビートダウン役としてゲームを進行。計算しながら最後は自分のライフを1点(計算通り)残して見事に勝利。

ブロック理論 まとめ

教訓

  1. カードブロックは効率良く
  2. 装備ブロックはその効果の表現価値を考慮した上で、効率良く
  3. ブロック戦略を知れ!
  4. ブロック戦術を見誤るな!

4つの教訓を合わせて考えると以下のようなピラミッド図になるのではないかと筆者は思いました。

最善のブロックは、デッキのブロック戦略を理解した上で、自分と(予測される)相手の手札を元に各イニングのブロック戦術を決め、それぞれのブロックを効率的に行えた先にある

感想

今回の記事は何度も書き直したのですが、FABのブロックを論理的に分析しようと試行錯誤する中、改めてこのゲームのデザインの絶妙なバランスに感心しました。かなり時間を費やしたので理論に(大きな)穴はないと自負していますが、筆者自信がこれを実践できているかと聞かれたら、答えは自信を持ってNOです。

しかし、何故/どこの部分が自分に足りていないかが今回の考察でわかりました。

まず、できるようになった点から上げてみます。この記事を書き始めるまで、効率的なブロックの意味を分かっておらず、自分なりに考えてブロックの有無を判断していたつもりですが、振り返ってみるとこれまで(冴えない)勘に頼っていた程度した。この部分を直しただけでも、だいぶプレイが安定したように思えます。

そして、筆者は比較的に操作が簡単なファイをゲーム開始当初から使用していて、ファイのブロック戦略は単純明快で、ブロック戦略の存在を頭に入れたことにより無駄なブロックがなくなりした。10点以上のライフと未使用の装備を残しての勝利は、ファイデッキに関しては、ライフをリソースとして上手く使用できていなかったことを表していると思いました。

しかし、現状筆者にとっての大きな問題点は、他のデッキのプレイスタイルをほとんど覚えきれていません。ゲーム開始当初は色々なヒーローに月替わりで挑戦していくつもりが、一つのクラスだけでも十分楽しめていて毎回プレイするたびにまだまだ自分の未熟さを感じて、次のヒーローに移行するタイミングに達していません。加えて、筆者は完全カジュアルプレイヤーで毎週数回の試合をウェブカメラを使用したオンラインアーモリーで行っているだけで、ほぼ同じメンバーなのでメタに偏りがあり対戦したことのないヒーローが多々あります。

対戦相手のプレイスタイルを理解していないので、相手の手札のパターンも可能性も予想できずにブロック戦術が立てられていないのが最善のブロックを選択できるレベルからはまだまだ程遠い理由だと思います。

しかし、最近立て続けにファイのミラー戦を行う機会があったのですが、この場合は相手のデッキのプレイスタイルを知り尽くしいるのでブロック理論を体現できて、相手のミスブロックプレイがわかるようになりました。

もう一点筆者がブロック理論を実践で上手く使えていない理由は、リアルタイムで複数のEVの計算が追いつきません。全てのターン長考できないので…

本気で上を目指すなら、自分のデッキに関しては事前にある程度の手札のパターンを想定して、EVを計算しておく必要があるのかもしれません。現状は相手が4枚のカードを攻撃用に温存していたら平均14の攻撃と見積もって、そこにカードが追加されたり、少なくなれば1枚3点分足したり・引いたりしています。しかし、この見積もり方はデッキのプレイスタイルがが全く反映されていない計算としては欠陥があります。

筆者より経験のある方、頭の回転の速い方、これからFABを始めるのでFABのブロックをどう考えていいのか分からない方には役に立つ記事が書けたのでないでしょうか?何か気づいた点があれば、Youtubeチャンネルまたはここにコメントをお願いします。

参考