海外のフレッシュアンドブラッドTCGのYoutubeやポッドキャストを視聴していると、頻繁に耳にするのがAbove/below/at Rateと言葉で、これらはカードの比較的な評価価値を表しています。今回は、実践的なFABにおけるカードの強弱の評価(レート)についてさらっと考察します。
カードレート・評価
カードレートの定義
カードレート・評価とは?
平均的なカードの表現価値(EV)を基準として、対象のカードが意図した用途で使用された時に発揮できる(平均な)表現価値の相対評価。
少し(かなり?)分かりにくい定義なので、個々の要素に分けて説明していきます。
“相対評価“
表現価値とレート/評価の差は、表現価値は絶対価値で数値で表されるのに対して、レートはゲーム平均表現価値と比較した相対価値です。
平均表現価値と比較 | |
---|---|
At Rate (平均通り) | = |
Above Rate (平均超過) | > |
Below Rate (平均未満) | < |
“平均的なカードの表現価値を基準”
単刀直入に書けば、カード1枚3点、コスト1で1点、アクションポイントが1点を組みあわせて基準値を計算します。詳細は下記を参照してください。
“カードが意図した用途で使用された時に発揮できる(平均な)表現価値”
単純にカードの表現価値と書かずに長たらしく定義したのはカード評価はカードをうまく活用できると仮定して判定が下されています。よって実際の使用方法で変化する表現価値とは違い、カードのレート・評価は一般的な定義では変化しません。
もしあなたがこのターン他のレッドカードをプレイしたなら、Blaze Headlongはgo againを持つ。
例えば、Above Rateという評価でデッキに含まれているBlaze Headlongでも、状況によってはブロックに使用して表現価値2点というBelow Rate的な使用になります。この場合は、この試合においてはそのカードの表現価値は低くなりますが、カードの評価は変わりません。
ただし、毎試合、予想した通りの評価分の表現価値が得られない場合は、カードの評価自体が間違っている可能性があります。よって、ここで平均的なと付け足しているのは、運の要素で10回に1回しか出せない表現価値を元にAbove Rateと判定しても、その再現性が低すぎて実際はそのカードが10回のうち9回はBelow Rateの表現価値なら、カードの評価としてはBelow Rateとするべきだからです。
カードレート・評価の定義
X ⬜️ Y
X = カードが意図的に使用できた時の平均的な表現価値
Y = 全体カード平均表現価値
At Rate
表現価値の平均は、テキスト効果なしのバニラカード・Wounding Blowを見るとわかります。Wounding Blowはブロックなら3点の表現価値、しかし攻撃なら4点となっています。しかし、ハミルトン式に見解するとアクションポイントには1点の価値がある計算となります。
この方法で見るとWounding Blowを攻撃に使用した場合は、カード1枚の持つ3点の価値+アクションポイントを消費する分の1点を合わせて合計4点となります。つまり、攻撃・防御両方の面でこのカード単体には3点の価値があると解釈できます。
よって平均レート通り(at rate)のカード1枚には3点の表現価値があると言えます。
平均レート通り(at rate)のカードは3点の表現価値
平均レートのアクションポイントは1点の表現価値
次にコストの持つ表現価値の可能性を見てみます。
上の3枚はどれもテキスト効果のなしのバニラカードですが、それぞれ左から順にWounding Blowより1点ずつプレイに必要なコストが増えています。これに比例して攻撃値も1点ずつ上がっています。よって、1点のコストが持つ平均的な表現価値は1点と分かります。
平均レートの各コストは1点の表現価値
Above Rate
レート超過のカードの例を見てみましょう。
あなたは手札からカードを一枚デッキの一番下に戻しても良い。そうしたならば、カードを1枚引く。
Sink Belowレッドをブロック使用した場合の表現価値は4点で、レート通りの3点よりも高いのでレート超過のAbove Rateカードとなります。
各ターン1回限定 – {r}{r}: アタック
各ターン1回限定効果 – あなたが6以上の{p}を持つカードを捨てたとき、Romping Clubは+1{p}を得る。
アーセナルパスのホスト・ライナー好きのデールヘイデンがAbove Rateとアピールしたライナーの武器です。2点のリソースとアクションポイントを消費するので、At Rateなら3点攻撃のところが、効果条件を満たしていなくてもそれ以上の4点攻撃力を持ちます。効果を満たしていれば、さらに上の5点攻撃。完全なAbove Rateとなります。
もしあなたがこのターン中に他のレッドカードをプレイしていたなら、Blaze HeadlongはGo Againを得る。
上記でも例として使用した、Blaze Headlongです。このカードは、テキスト効果の条件を満たした状態で攻撃に使用した場合は、アクションポイントを消耗せずに0コスト、4点の攻撃をもつことになりAbove Rateとなります。
上で書いた通り、もしこのカードをブロックカードとして使用した場合は2点のブロックしかないのでBelow Rateとなります。これは重要な点で、FABでは殆どカードに共通することで、AboveやBelowというの判定はそれぞれのカードが意図した用途で使用された時に発揮できる平均な表現価値で決定されます。Blaze Headlongは攻撃として使用するカードでデッキに含まれるため、Above Rateのカードと言えます。
Below Rate
レート未満のカードの例を見てみます。
対象のヒーローに3点のダメージを与える。
ハミルトンが公言しているように、表現価値の観点から見るとウィザードのアーケン攻撃アクションは基本的にBelow Rate=レート未満となります。例えばZapは0コストカードでアクションポイントを使用するのでAt Rateなら4点分のダメージが必要ならところ3点となっています。
現状1点のアーケンダメージは1点のリソースが必要になるため、1枚のカードで4点のアーケンダメージだとSink Belowのように1枚で防げるカードが存在しないため、デザイン的にはバランスが取れていすが、純粋なダメージ面から見るとレート未満です。
ただし、カード単体でのレート未満でもウィザードクラスにはコンボ級のシナジーが存在しているためこれらのカードを合わせることでレート超過のカードへと超進化します。
4点のダメージを対象の敵対するヒーローに与える。
もし、Aether Wildfireが相手のターン中にプレイされたなら、そのターンの終了時まで、アーケンダメージ時を与えるアクションカード効果はそのアーケンダメージ足すXのダメージを与える。XはAether Wildfireが与えたダメージ。
Kano専門
Xのアーケンダメージを対象のヒーローに与える。Xはこのターンあなたがそのヒーローに与えたアーケンダメージ。
表現価値だけを元にしてレートを見ると、殆どのイエロー・ブルーカードがBelow Rateとなります。
しかし、大半のブルーカードはプレイするためではなく、他のカードのコストを支払うため=ピッチ用としてデッキに導入されています。つまり、これらのカードは他のレート超過カードを使用するためのサポートとしてデッキに含まれていると筆者は考えます。
もし、Soulbead Strikeがヒットしたなら、これはGo Againを得る。
例えば、ブルーSoulbead Strikeは条件付のGo Again持ちです。たとえ条件が発動したとしても2点攻撃しかないためBelow Rateのカードです。ブロックなら3点でAt Rateですが、3点ブロックだけが目的なら他のカードでも代用は無数にあります。
各ターン1回限定アクション – {r}{r}: アタック
もしあなたが2回以上のドラコニックチェーンをコントロールしているなら、Searing EmberbladeはGo Againを得る。
しかし、ファイなどのデッキでブルーピッチと使用することでその価値を上がります。例えば、ピッチして2点のリソースでエンバーブレードを使用。残りの1点で、Phoenix Flameを手札に戻して1点攻撃。1枚のブルーピッチから4点分の攻撃表現価値をアクションポイントを消耗せずに出せた計算になります。
実践レート
FABのカードはバランスよく作られているので、絶対的な上位互換のカードというものが現状は殆ど存在しません。つまり、単純に無条件でAbove Rateカードが存在するのではなく、Above Rateのカードはその(真の)価値を発揮するために大抵の場合は、何らかの条件を満たさなくてはいけません。
よって、練り込まれた構築環境のデッキは再現性高く複数のカードがAbove Rateの表現価値を発揮できるように設計されています。
練り込まれた構築環境のデッキは再現性高く複数のカードがAbove Rateの表現価値を発揮できるように設計されています。
デッキの一番上のカードを公開する。Ravenous Rabbleは-X{p}を得る。Xは公開したカードのピッチ数値。
Go Again
運の要素を持つRavenous Rabbleですが、レッドカードの多いデッキで使用する場合は、レッドカード(ピッチ数1)が高確率で出るので、平均的に見て0コスト・Go Again持ちの4点攻撃のカードとなります。これは、Above Rateですね。
次に、カード価値の重要性と初代世界王者マイケルハミルトンの名を世に知らしめた代表的なカードWounded Bullを見てみます。
Wounded Bullをプレイした時、もしあなたのライフが相手よりもが少ない場合は、+1[attack]を得る。
3コストかかり、アクションポイントを消耗するので7点攻撃値はテキスト効果の条件を無視するとバニラカードのRaging Onslaughtと同様となり平均通りのレートカードです。しかし、テキスト効果の条件を満たした場合は8点攻撃になりレート超過のカードになります。
Essence of Ice
もしあなたのターンではないなら、あなたはノンアタックアクションカードをあなたのアーセナルからインスタントとしてプレイしても良い。
あなたがアイスカードを相手のターン中に使用する度に、フロストバイトトークンをそのプレイヤーのコントロール下で作成する。
FAB初の世界王者ハミルトンは、超高額のマジェスティックカードCommand & Conqureなどではなく、Wounded Bullをアイスランダーのデッキに搭載して2022年度USAナショナルチャンピオンシップで優勝したことでFAB業界を驚かせました。
これはアイスランダーのゲーム開始ライフが通常の40点より低く、ウィザードの特性上最後は相手のターンでも攻撃を行う2ターン連続攻撃ができるために、ゲーム全体を通して戦略的に相手よりライフ値を低く維持したまま勝利するスタイルが取れるヒーローと判断して、その状況でのWounded Bullの価値を見出した結果によるものです。つまり戦略的にWounded Bullをレート超過で使用できるデッキ構造というわけです。
構築とリミテッド環境のレート差?
ハミルトン式表現価値の記事で、ハミルトンがリミテッド環境なら4枚の手札の持つ表現価値の合計は平均13点。構築環境ならその上の14点以上が必要と公言したことについて触れました。しかし、これは構築環境になったからと言ってカードのレート・評価基準が変わるわけではありません。
リミテッドの13点という数値は各カードが3点とアクションポイント1点を合わせた数値で、すべてのカードがAt Rateの通常レートと解釈できます。
対して構築環境の14点という数値は、デッキ作成時に計画的に複数含まれるレート超過のカード達が平均毎ターン1枚はその真の価値を発揮できるという計算にになります。
よって個人的な見解ではハミルトンが公言している4枚の手札の持つ平均表現価値とは以下のように解釈します。
- リミテッド環境では、平均的に全てのカードがAt Rate・レード通り
- 構築環境では、平均的に各イニング1枚はAbove Rate・レート超過の力を発揮できる。
- レート超過は無条件で発揮できる表現数値ではないので、構築環境デッキの作成時にはデッキの戦略下でその条件を満たせるカード、カード間でのシナジーなどを元にカードを選ばなくてはいけない。
つまり、競技レベルで設計された構築環境デッキとは、デッキ戦略に沿った条件下でAbove Rate・レート超過を出せるカードやシナジーが多く含まれるデッキと定義できるのではないでしょうか?
まとめ
カードレート・評価の定義
X ⬜️ Y
X = カードが意図的に使用できた時の平均的な表現価値
Y = 全体カード平均表現価値
- カード1枚: +3
- リソース1点: +1
- アクションポイント: +1
レート・評価 | 平均表現価値と比較 |
---|---|
At Rate (平均通り) | = |
Above Rate (平均超過) | > |
Below Rate (平均未満) | < |
- 競技レベルで設計された構築環境デッキとは、デッキ戦略に沿った条件下でAbove Rateを出せるカードやシナジーが多く含まれるデッキ。
感想
筆者は自分でデッキを構築するレベルに達していないのですが、カードのレートを考慮すると、デッキの求める条件や環境そして戦略が見えてくるような気がします。とりあえず、何がAt Rateで何がAbove Rateか分かったことで各種メディアのキャスターの言っていることが理解しやすくなりました。
もし、自作の構築デッキがイマイチ弱いと感じた場合は以下の観点から見てみても面白かもしれません。
- レート超過のカードが何枚入っているか?
- レート超過のカードが安定して使用できるように、他のカードによるサポート環境はできているか?
- 手札を何回も引いて、それぞれの手札の表現価値が平均14点以上出せているか?
⚠︎コンボ系のデッキは、1ターンで一気に表現価値を稼ぐのでコンボターンの表現価値と、他のターンの価値を平均を計算しなくてはいけないかもしれません。
上の方法で、事前に自分のデッキを分析しておくことで、試合中にそれぞれのカードの持つ(自己)評価が即座にわかるようになり手札の最大表現価値の計算が早くできるようになるのではないでしょうか?