【FaBrain】アーセナル理論  〜利点編〜

 

アーセナルを制するものはFABを制すると誰かが絶対言ってると思います。基本的に1枚のカードを設置して、そこからプレイできるというルール制限のついた手札の感覚のアーセナル構造ですが、一見するとシンプルなゲーム構造。実は奥深く、アーセナル使用の熟練度はプレイヤーの勝率に直結するスキルです。

目次

アーセナルプレイ

わずか1枚のカードを自分のターン終了時のエンドフェーズにアーセナルゾーンと呼ばれるプライベートゾーンに設置するだけの、一見すると他のゲームでも経験したことのあるようなゲーム構造ですが、アーセナルを使いこなすことはFaBのゲームプレイのスキルレベルに直結しています。

アーセナルゾーンに置かれたカードの持つ表現価値(EV)は、単純にそのカードがアーセナルから使用された時の表現価値(EV)になります。しかし、手札のカードと比較して、アーセナルに設置されたカードは基本的に、エンドフェーズに中に設置するのですぐに使えない、1枚限定、ブロックとピッチには使用できなくなるなどのアーセナルゾーン専用のゲームルールがあり、これらのゲーム構造から生まれる特有の利点と欠点が存在しています。

そこで今回から3回に分けて、アーセナルをより上手く使いこなすために必要なアーセナル理論について考察していきます。

初回の今回では、アーセナルゾーンカード設置で得られる利点について注目。第2回ではその反対の欠点。そして第3回では利点と欠点をもとに、アーセナルプレイのコツ・教訓について語ります。

アーセナルの利点

一枚のアーセナルゾーンから使用されるカードには、これらのどれか1つ利点を得る場合もあれば、複数の利点を同時に得ることもありますが、筆者の見解としてはアーセナル使用で得られる可能性のある利点は5種類に分けられると思っています。

  1. アーセナル恩恵
  2. 5枚手札
  3. カード温存
  4. カードドロー
  5. ブラフ

アーセナル恩恵

最もわかりやすいのが、ゲームのデザインレベルで意図的にアーセナルにカードを置くことで直接恩恵が得られるカードや能力です。代表的なのはクラス自体がアーセナルを戦術のコアとしている、レンジャーヒーローの能力や武器、カードなどのアーセナルゾーンシナジー効果です。しかし、これはレンジャーに限らず他のクラスやカードでも見られます。

Lightning Surgeがアーセナルからプレイされたなら、それはGo Againを得る。

Ligthening Surgeはシンプルにカード自体がアーセナルゾーンからプレイされることでボーナスを得ます。このカードは0コスト4点攻撃で普通に使用すると、平均レートカードですが、アーセナルからプレイすることでgo againがつきレート超過のカードになります。

2枚カードをドローする。

もしTome of Fyendalがアーセナルからプレイされたなら、あなたの手札にあるカードそれぞれに付き1{h}を得る。

ファイエンダルの大著のライフ回復はアーセナルからプレイしたのみ有効です。

エッセンスオブアイス

もしあなたのターンでなければ、あなたはブルー’ノンアタック’アクションをアーセナルからインスタントとしてプレイしても良い。

あなたがアイスカードを相手のターン中にプレイする度に、1つのフロストバイトを相手のコントロール化で作成する。

アイスランダーの能力では、ブルーカードをアーセナルに設置することでカードを相手のターン中インスタントとして使用できます。

各ターン1回限定インスタント – {r}, あなたのアーセナルに裏向きで置かれているカードをデッキの一番下に置く: カードを1枚引き、あなたのヒーロに与えられる次の1点分のダメージを無効化する。

レジェンダリー装備のクラウンオブシーズは、カードの種類に関係なくアーセナルに設置するだけでアーセナル恩恵が得られる装備です。

ゲームルールによってデフェンスリアクションカードタイプのようにアーセナル恩恵を受ける場合もあります。

Cards with dominate cannot be defended with more than 1 card from the defending hero’s hand.

Dominateを持ったカードは防衛側のヒーローの手札からは1枚上でデフェンス使用できない。

アーセナルのプレイはdominate制限に該当しないので、アーセナルに設置してあるSink Belowなら、手札ブロックに加えての使用が可能になります。

Death Touchは手札からプレイできない。

これがヒットした時、Frailty,InertiaまたはBloodrotトークンをそのプレイヤーのコントロール化で創造する。

間も無く発売のアウトサイダーズセットで登場する、デスタッチは手札からプレイできないという縛りがあります。ウズリの能力にステルスカード入れ替えによる追放ゾーンからのプレイも一つですが、他のアサシンとレンジャークラスのヒーローの場合は基本はアーセナルに一度設置することでカードの使用が可能になります。通常オンレートだと6点攻撃は2コストかかるので、この場合はアーセナル恩恵により1リソースセーブしたことになりますね。

5枚手札

現在全てのヒーローのインテレクトが4なので、手札ドローなどがない場合は通常プレイヤーは各ターンサイクル=イニングを4枚のカードでプレイすることになります。

しかし、アーセナルゾーンにカードを設置することで実質的に手札を5枚に増やすことができます。そして中には、5枚に増やした手札で単純にカード1枚分のEVが追加されるよりも大きなターンEVを得ることができるカードやシナジーが存在します。

例えば、Faiなど連撃を得意とするアグロコンボデッキにおけるArt of War、KanoのAether Wildfire/Lesson in Lavaなどのコンボターンでは、4枚と5枚の手札でターンEVが大きく変わります。

KanoのWildfire LavaコンボをTunicカウンターと運よくRagamuffinが3点分のリソースを生み出したとして計算した時、手札2枚ブルーピッチと合わせるとコンボ発動ギリギリの10点リソースとなります。この時、相手がノーブロックの場合に提示できるコンボターンダメージ=ターンEVは23点です。

これに対して、もしアーセナルにAether Wildfireが設置されていて、その分で引ける1枚の手札のカードがブルーカードだった場合はどうでしょうか?これによりコンボターンのEVはなんと35点にとなります。もし、手札がブルーではなくレッドカードだったとしても28点となり、この状況でアーセナル使用が生み出すEVは5〜12点とカード1枚で得られるEVを大きく上回ります。

また、コンボ級の大ダメージは出せなくても、5枚のカードを1ターンまたはイニングで使用すれば必然的に4枚の手札と比べてイニングEVが高くなるためテンポを意図的に得る手段としても用いられます。

カード温存

5枚手札を同時に使うのが目的ではなく、ある特定のカードを効率よく=タイミングよく使用するために温存することもアーセナル使用の利点となります。

あなたは手札のカード1枚をデッキの一番下に戻しても良い。もしそうしたならば、カードを1枚引く。

例えば、レート超過のブロックカードとしては代表的なSink Belowですがその価値はオンヒット効果が持ったブレイクポイントを超えた攻撃をブロックすることで発揮されます。よって、このカードを重要なゲーム分岐点まで温存することは戦略的に頻繁に用いられます。

1つを選択する;

  • 対象の棍棒またはハンマー武器攻撃は+4{a}を得る。
  • 対象の{r}{r}以上のアタックアクションカードは+4{a}と”もしこれがヒットしたなら、デフェンス側のヒーローはカードを1枚捨てる”を得る。

同じようにガーディアンデッキには鉄板の1枚とも言えるアタックリアクションのパメルは、チューニックリソースを使用して、Command and Conqureと組み合わせると3枚カードで、10点攻撃+アーセナル破壊+手札破壊。平均カードEV1枚3点とすると、合計で平均16点分の攻撃となり大きくレート超過のシナジーとなります。

カードドロー

4つ目の利点は、自分のターン終了間際に手札にカードが1枚余ってしまった時、そのカードを手札からアーセナルに設置することで、その分手札に新しいカードが引けるようになることです。平均カード1枚3点のEVと考えると、カードを1枚多く引けるということは+3点のEVを得た計算になります。

逆に考えると、タイミングよく使用するためにSink BelowやPummelを手札に温存しておこうとすると、その間は3枚のカードでプレイすることになりその分テンポを失い続けることになります。パメルシナジーの例だと、3枚カードの平均レート価値は10点分。つまり、毎ターン3点分のEVを失っていくとすると2ターンでその価値と同じ分のEVを失うことに。よって手札に温存している場合は2ターン以内に使用しないとその価値はないことになります。

そこでPummelやSink Belowをアーセナルに設置することで、これらのカードをレート超過で使用できるタイミングまで温存しながらも、毎イニングヒーローのインテレクトの上限まで手札を補充して続けてプレイしていくことが可能になります。

この例のように、大抵の場合は正しくアーセナルを使用できていればカードドロー以外の利点も同時に得ているはずです。もし「カードドロー」のみがアーセナル使用の利点の場合は欠点の方が大きくなり、ゲーム全体を通してみた時に、そのカードのアーセナル設置により総合EVが下がっている可能性があります。

ブラフ

ブラフ効果が本当の意味での利点かどうかは微妙かもしれませんが、プレイ経験が豊富なプレイヤーほど相手の手札を予測しながらプレイするのでデッキのプレイスタイルによってはその効果は本物と筆者は考えます。

例えばクラシックコンストラクト環境でKano対戦経験のあるプレイヤーはアーセナルに設置されたAether Wildfireの対応が試合の鍵となるのを理解しています。そこで、アーセナルにカードが設置されている時にはコンボでワンターンキル(OTK)を受けないように、あえて自分のターン中は手札を使い切らずにピッチ用のカードを1枚手札に温存します。

コンボターン時のWildfire1点のダメージは5点分の効果なので、ブルーピッチで3点防げれば15点ダメージを防ぐことになりるので戦略としては正しい判断です。しかし、もしKanoプレイヤーがWildfireではないカードをアーセナルに設置していた場合はこの1枚のブロック用カード温存は無駄になり、Kanoプレイヤーの視点から見ると、相手にカード1枚分のEVを何もせずに失わせたことになります。

同様に、テンポアーキタイプのアイスランダーがアーセナルにカードを設置することで、相手はFrostbiteによる妨害を想定して、リソースに余裕がない手札なら非効率でもカードをブロックに使用することを優先するようになり、テンポデッキの戦略と一致したゲームの流れに誘導できます。

実例としては、2022年度ワールドチャンピオンシップ準決勝・ダニエル・ラドコフスキーのFai対クリス・アイアーリのブライアーの一戦です。ラドコフスキーがSnatchのオンヒットで引いた手札Phoenix Flameをアーセナルに設置する瞬間がありました。

もし、あなたが2以上のドラコニックチェーンリンクをコントロールしているなら、Phoenix Flameは+1{a}を持つ。

Go Again

フェニックスのアーセナル設置は教訓編でより詳しく分析しますが、この時ラドコフスキーはアーセナル設置直後の相手の攻撃ターン中に何度も、アーセナルに設置したフェニックスを気にするそぶりを見せました。ラドコフスキーが自分の設置したカードを忘れることも、フェニックスの効果を覚えてない訳もないのでこれは明らかなブラフです。相手に、自分はArt of WarやSink Belowを持っているかもしれないぞ。本当に攻撃するのか?などと思わせたかったのではないでしょうか。

感想

アーセナルにカードを設置すべきかどうか迷ったら、まずはそのカードを手札だから使用した時と比べて一体どの利点が得られているか考えてみるところから始めるのがいいかもしれません。

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