【FABrain】アーセナル理論 〜教訓編〜

全3回に分けてのアーセナル理論考察シリーズ、最終回の今回は第1回と2回で紹介したアーセナルプレイによる利点と欠点を実際のアーセナル使用で生まれる表現価値の計算に当てはめてみたいと思います。

必修知識

アーセナル理論

筆者が考えるアーセナルプレイの教訓は4点です。

  1. Merit > Demerit: 利点 > 欠点
  2. Merit=eAD: アーセナル存続期間が長いほど、メリットは大きく
  3. Understand: デッキのアーセナル戦略を理解する。
  4. Predict: 機会費用を予測

Merit > demerit: 利点 > 欠点

各カードがアーセナル使用で生み出す表現価値(アーセナル価値・アーセナルEV)は、単純にアーセナル使用の利点で得られる表現価値(EV)から欠点で失うEVの差となります。

アーセナル価値 = 利点EV – 欠点EV

よって、効率的なアーセナル使用とはなるべく利点を欠点より大きくして、より大きなアーセナル価値を生み出すことなります。

ケース: Rupture不可能・Lava Burst

状況

使用デッキ: コンボFai

チェーンリンクが2つしか繋がらず、アクションポイントはありますが、Rupture条件が満たせていない状況です。手札にはこのデッキでは鉄板のコンボクローザー・Lava Burstが1枚残っていて、アーセナルは空いています。

Rupture – もしLava Burstがチェーンリンク4以上でプレイされたなら、それは+3{p}を得る。

利点

  • アーセナル恩恵
  • 5枚手札(EV7点)
  • カード温存(EV5点)
  • カードドロー
  • ブラフ

欠点

  • カードプレイ限定化
  • テンポ・ロス(EV2点)
  • ダブルテンポロス
  • アーセナル事故
  • アーセナル渋滞?

この状況でのLava Burstアーセナル設置の最大の利点は、Rupture効果の条件が満たされるタイミングまでの「カード温存」です。Rupture条件を満たせた状態なら、Lava BurstのEVは5点となります。

5枚手札のコンボターンなら、Art of Warで1点分の攻撃追加、多くの場合はTigerstripe Shukoでさらに+1点追加となり、合計で7点分のEVとなる可能性があります。

最大の欠点はこのターンはアクションポイントが残っていると仮定しているので、Lava Burstの2点攻撃分がテンポロスとなります。

分析結果:
この時点で想定されるLava Burstアーセナル使用が生み出すEVは5-2=3または7-2=5点です。

これはカード1枚平均3点のEVとすると、1枚〜2枚弱の価値が得られるということになります。Lava Burstがこのデッキで、鉄板のアーセナルカードの理由が分かると思います。

筆者がなぜ残りの利点と欠点が当てはまらないと判断したのかを説明していきます。

アーセナル恩恵

単純に、Lava Burstには「アーセナル恩恵」はありません。

カードドロー

「カードドロー」利点の可能性ですがこれは今回の状況が、アクションポイントが残っていると仮定しているため当てはまりません。もし、Lava Burstをこのターンプレイして手札を空にしてターンを終了すれば、全インテレクト分ドローできる選択肢があるためです。

もし、Lava Burstを使用するためのアクションポイントが既に消費されていた場合はLava Burstを手札に残すかアーセナルに設置するかの2択となり手札に残す場合は1枚分ドローが減ってしまうのでアーセナル設置によるカードドローが利点となります。

ブラフ

メタ環境で知れ渡っているこのデッキにおいて鉄板のコンボターンクローザーである、Lava Burstはアーセナル設置向けのカードと幅広く認識されているため「ブラフ」効果はありません。

カードプレイ限定化

Lava Burstがデッキに含まれる理由は、Rupture条件を満たした状況でのコンボクローザー使用なので、このカードは元々プレイ用としてデッキに含まれているので「カードプレイ限定化」は当てはまらないことになります。

ダブルテンポロス

万が一、Rupture条件を満たさない状況でLava Burstをアーセナルからプレイすることになった場合、その時のLava Burstが発揮するEVは2点。今使用するEVと同様になります。よって、ダブルテンポロスとはなりません。

もし、ミスプレイにより手札にGo Again付きのカードを無視して、より高いEVを選択せずにアクションポイントを使用してLava Burstを使用した場合はダブルテンポロスになる可能性があります。ただ、これはアーセナル設置が間違ったのではなくアーセナルからのカードプレイ時のミスプレイなので個人的にはダブルテンポロスとしてはカウントしていません。

アーセナル事故

Lava Burstはアタックアクションカードなので、自分の判断でいつでも自分のターンにアーセナルからプレイできるので「アーセナル事故」にも当てはまりません。

アーセナル渋滞

他の教訓のもとになるアーセナル使用欠点です。ここでは簡単に説明します。運などの要素から今後よりEVの高く出せるカードが手札にきた場合は、アーセナル渋滞の可能性は残ります。

Merit=eAD: アーセナル期間が長いほど、利点は大きく

アーセナル期間が長ければその分、手札に回ってくるカード数も増えてくるので機会費用が確率的に増していきます。つまり、アーセナル期間が長くなることによりアーセナル渋滞のリスクが高まるということです。よってアーセナル期間が長くなる可能性の高いカードを設置する時は、その利点はより大きくなくては割に合わないということになります。

ケース:Aether Wildfireコンボ

状況

使用デッキ: コンボKano クラシックコンストラクト

自分のターン中にアクションポイントも必要なリソースもある状況で、手札にAether Wildfireがあります。相手はアーケンバリアーを持っていません。

対象のヒーローに4アーケンダメージを与える。

もしAether Wildfireが相手のターン中にプレイされたなら、ターン終了時までアーケンダメージを与えるアクションカード効果は、その分のダメージにXを加える。XはAether Wildfireが与えたダメージ。

利点

  • アーセナル恩恵
  • 5枚手札(EV=25~30点)
  • カード温存(EV=20点)
  • カードドロー
  • ブラフ

欠点

  • カードプレイ限定化
  • テンポ・ロス(EV=4点)
  • ダブルテンポロス
  • アーセナル事故
  • アーセナル渋滞

アーケンバリアーがなく、Wildfireが使えたターンにこれを使用せずにアーセナル設置したことで、Wildfire単体のEV4点分がテンポロスとなります。もし、代わりに別のアクションポイントを使用するカードで攻撃してAPを消費した場合はテンポロスは、そのカードとWildfireの差になります。例えば、1点攻撃のカードを使用していた場合は3点のテンポロスです。

コンボターンでのWildfireによる1点ダメージはその5倍に膨れ上がります。よって、コンボターンまで温存することで得られるEVはは4 x 5=20点となります。

さらに、5枚手札によりピッチカードが1枚増えることでWildfireにはさらに1〜2点分のダメージを上乗せすることができる可能性が高まり、この場合はWildfireが生み出す攻撃は25~30点まで跳ね上がります。

分析結果:

この状況のアーセナル価値は16(20-4)〜26(30-4)点になります。

カード枚数として換算すると5~9枚分のカードの価値となります。つまり、Wildfireのアーセナル期間が最悪この5~9ターンサイクルぐらい長くなってもその価値があるという計算になりますね。

⚠︎ターン終了時以外のカードドローは、計算を簡単にするためここでは省いています。

状況が変わればアーセナル鉄板のカードであったとしても、その価値を失うことになります。

例えばWildfireのアーセナル期間が9ターン以上続く場合、その間にカード3枚を効率的なブロック使用、続くターンアーセナルから攻撃などという無駄のないターンサイクルの可能性が生まれて、間にアーセナル使用する別のカード達で総合EVがWildfireをコンボターンまで温存しておく以上のになる可能性もありますた。

⚠︎しかし、確率的にみると60枚デッキに3枚積み・そこにさらにLesson in Lavaなどのチューターカード、他にも手札引きなどが間に入ると自分の最初の3ターン中にWildfireが手札に来る確率は75%以上の高確率となっています。

ケース:Phoenix Flameアーセナル

この教訓は逆に解釈することもできて、「アーセナル期間が短いならその分でアーセナル渋滞の欠点が減るのでアーセナル価値が低くても良い」と解釈できます。

状況

使用デッキ:Faiコンボデッキ

手札にある、Phoenix Flameをアーセナルに設置するべきか迷っています。

もし、あなたが2以上のドラコニックチェーンリンクをコントロールしているなら、Phoenix Flameは+1{a}を持つ。

Go Again

たまに、対戦相手がPhoenix Flameをアーセナルに設置するのを見かけますが、これには意味があるのでしょうか?個人的に疑問に思ったので分析してみました。

コンボ版Faiデッキ内でのPhoenix FlameのEVはドラコニックチェーン条件、Tigerstripe Shuko装備効果、Art of War使用ターンなどの組み合わせで基本的に0〜3点と状況によって変わります。

利点

  • アーセナル恩恵
  • 5枚手札(EV=2~3)
  • カード温存(EV=0~2)
  • カードドロー
  • ブラフ

欠点

  • カードプレイ限定化
  • テンポ・ロス(0~3)
  • ダブルテンポロス
  • アーセナル事故
  • アーセナル渋滞(?)

フェニックスは0コストGo again持ちなので、アクションポイントもリソースも消費せずに使用できるためアーセナルに設置したとしても、即座に次のターンで使用可能な上に、元々ブロックには使えずピッチも1点のみなので欠点となるのは実質テンポ・ロスのみになります。

そしてテンポロスによるEVは、実際にそのターンでプレイした場合のEVになります。同様にカード温存や5枚手札で得られるEVのその時の使用によるEVです。

よって、Phoenix Flameが0点の状態ならテンポロスはなく欠点がないため他にアーセナル向けのカードがないならアーセナル設置して平均1~2点のEVをすぐ次のターンで得るというのは戦略的に納得いきます。

しかし、もし3点攻撃のPhoenixのターンにアーセナルに設置した場合のテンポロスは3点。基本的に、アーセナル設置して後回しにしてもそれ以上の価値を得るのは難しくなり結果的に高確率でアーセナル設置はEVを下げることになります。

分析結果:

テンポロスがないなら、フェニックスのアーセナル設置は戦略的にありです。

⚠︎フェニックスのEVが下がってもチェーンリンクを伸ばすことで、他のカードのEVをあげて最終的にターンEVを上げる場合もあると思いますが、今回はそのあたりは省きます。

Understand: デッキのアーセナル戦略を理解しよう!

ブロック戦略と同様に、それぞれのデッキにはアーセナル戦略が存在すると筆者は考えます。中には、アーセナル使用が戦略の要になるデッキタイプもありこれを理解していないと、デッキ本来の力が発揮できないこともあります。

典型的な例だと、レンジャークラスです。レンジャーはアーセナルゾーンを戦略の中心とするようにデザインされています。アローカードはアーセナルからのプレイが使用条件なので、レンジャークラスにはエンドフェーズ以外にも複数のアーセナル設置方法が存在しています。

Reload

単純な例だと、リロードキーワードです。この効果はもしアーセナルにカードがなければ、手札から裏返しでアーセナルにカードを設置してもよいというものです。

既存の弓武器も全て起動型能力でアーセナルにカードを設置できます。

各ターン1回インスタント-{r}:あなたはアローカードを手札から表向きにアーセナルに設置しても良い。

各ターン1回インスタント-{r}:あなたのアーセナルに裏向きで置かれているアローカードを表向きにしても良い。そうしたならば、Aimカウンターをそれに置く。

例えば、Barbed Castawayの起動能力を使用してカードをアーセナルに設置した場合は、そのカードは表向きなのでもう一つの起動能力で続けてAim(標準)カウンターを置くことはできません。

あなたが手札からカードをプレイするとき、あなたはカードを1枚手札から伏せてアーセナルに設置しても良い。

あなたのコントロール化にあるトラップが発動するたびに攻撃中のヒーローに1ダメージを与える。

そこで、同じセットで登場するRiptideの意図的シナジー(intentional synergy)を使用して、相手のターン中にトラップデフェンスリアクションを使用または、自分のターン開始時にGo Again付きアクションを使用して、ヒーロー能力でアーセナルにアローカードを設置。

これにより設置されたアーセナルカードは裏返しなので、そこでBarbed Castawayの起動型能力でAimカウンターをのせるという流れになります。これは1点のリソースの使い方としては、アーセナルにカードを設置するためだけに使用するよりも、Aimカウンターを乗せて+1攻撃などに繋げる方が理想的です。

エッセンスオブアイス

もしあなたのターンではないなら、あなたはブルー’ノンアタック’アクションカードをあなたのアーセナルからインスタントとして使用してもよい。

あなたが相手のターン中、アイスカードを使用する度にFrostbiteトークンを相手のコントロール化で生成する。

レンジャークラス以外にも、アイスランダーのヒーロー能力や強力なアース装備Crown of Seedsなどもアーセナルゾーンカードと直結した能力・発動アビリティの例です。

しかし、アーセナルを戦略の中心とするデッキとは逆に基本的に手札を毎ターン使い切るアグロ系デッキなどでは、アーセナル設置よりもなるべく手札4枚全てを使ってターンEVを高める戦略のため、アーセナルにあまり頼らない場合もあります。

コンボアーキタイプデッキは、アーセナルに設置するカードがコンボのキーカードになることが多いようです。中にはYoutubeのデッキテック動画などでもアーセナル向きのカードを具体的に説明しているものも見かけます。

つまり、それぞれのデッキがどのくらいの頻度でアーセナルを使用するか、どのカードがアーセナル向きなのかを理解しておくことがより高いレベルでプレイするために重要になります。

そして、アーセナル戦略の理解は自分のデッキに限らずメタ環境における対戦相手のデッキも理解することでさらにもう1段階上のプレイができるようになります。

相手の手札よりもアーセナルカードの方が選択肢が限られてくるので予測しやすくなります。簡単な例だと、ガーディアンクラスのPummelやFaiのLava Burst、KanoのAether Wildfireなどが鉄板アーセナルカードの印象です。これらのカードがアーセナルに設置されていると仮定して、トッププレイヤーは各ターン最前の1手を模索しているのではないでしょうか?

もし対戦相手がアーセナルを戦略の要とするタイプのデッキなら、アーセナル破壊を持つCommand and Conqureの活躍は必至ですね。

Predict: 機会費用を予測 

アーセナルゾーンの使用観点から見ると、競技レベルでのトッププレイヤーと、そうでないプレイヤーの大きな差は”機会費用予測”の精度と筆者は考えます。

カードゲームなので、実際に手札にどんなカードが引かれるかは運次第です。しかし、勝率の高いプレイヤーは自分の山札に残っているカードから生まれるであろう機会費用と、今から設置しようと思っているアーセナルカードを、予定しているアーセナル期間と照らし合わせて予測しているはずです。経験が豊富なプレイヤーほど経験が生み出す感と予測の精度は高くなっています。

ケース: Death Touch

状況

使用デッキ: シールド戦・Riptide

デッキ中では、レート超過の1枚・レッドDeath Touchはまだデッキに残っています。

自分のターン終了時に手札に残った1枚はイエローFalcon Wingでした。

Death Touchは手札からプレイできない。

これがヒーローにヒットした時、Frailty、InertiaまたはBloodrot Poxトークンをそのコントロール下で創造する。

Death TouchがヒットすればBloodrot Poxを創造して、相手に2点の追加ダメージ。つまり、1コスト8点のEVの可能性を持つレート超過のカードです。

もしFalcon WingがAim(標的)カウンターを持っていたなら、これは+1{a}を持つ。

手札に残ったFalcon Wingをアーセナルに設置して次の自分のターンにAimカウンターをのせて3点、Go Again攻撃と計画。

ところが、この直後手札に引いたのがDeath Touch、そしてさらにTrapカードでした。

もしこの時、アーセナルが空いていれば相手の攻撃ターンでデフェンスリアクションであるTrapカードを使用してRiptideの能力でDeath Touchをアーセナルに設置。続く自分のターンでDeath Touchを即座に使用。続く自分のターンでの攻撃ターンのEVを比較すると3点と8点の5点もの差が出ています。

これは実際に筆者の失敗例です。Death TouchとTrapカードが手札にくる確率が実際にどのくらいだったかは今更計算できませんが、最悪Aimカウンターなしで2点攻撃で使用した場合のFalcon Wingでも失うEVは1点。最低でも自分のデッキに残っているレッドカードの枚数ぐらい把握して、確率的により高いか火力の攻撃ができる可能性を残しておいた方が良かった気がします。

これはすぐ次のターンですが、機会予測の失敗でアーセナル渋滞に捕まった状況を表しています。

⚠︎実は次の日になって気づいたのですが、Driftwood Quiverを使っていればアーセナル渋滞を解消できていた…このカードを侮っていた時点でRiptide使用は自分にはまだ早かったのかもしれない…

Riptide専門

インスタント – Driftwood Quiverを破壊する: あなたのアーセナルにあるカード1枚をあなたのデッキの一番下に戻す。

ケース: Frost Hex Ice Eternalコンボ

2023年度Calling Indianapolisの決勝・マイケルハミルトンのアイスランダー対チャールズ・ダンの消耗戦オールドハイムの一戦です。

状況

使用デッキ:ブルランダー

ハミルトンは自分のターンである第4ターン、その直前の相手のターンで手札1枚を3点ブロックに使用。アーセナルにはFyendal Spiritが設置されています。この時点で手札は3枚は以下の通りでした。

この時は場にはまだFrost Hexは一枚も設置されていません。

あなたならどうしますか?どのカードを使用して、どのカードをアーセナルに設置しますか?先を読む前に少し考えてみると面白いかもしれません。

アイスランダー専門

アイス融合

X Frostbiteトークンを対象のヒーローのコントロール下で想像する。もしIce Eternalが融合された場合、そのヒーローがコントロールする数のFrostbite分のアーケンダメージをそのヒーローに与える。

コンボカードのIce EternalはFrost Hexが最低でも2枚、理想的なのは3枚場に揃って使用するゲーム中盤から終盤にかけて使用するコンボパーツです。よって、Frost Hexが一枚も設置されていないこの状況でのIce Eternalには使用価値がありません。

では、コンボに備えてIce Eternalをアーセナルに設置すると仮定した場合はどうでしょうか?

Ice Eternalがアーセナルからその価値分の使用をできるようになると言うことは、まず場にFrost Hexが2〜3枚で揃うと言うことになります。実際のアーセナル期間は未定ですが、Ice Eternalでアーセナルが埋まった状態だとFrost Hexは自分のターンでのみで設置が可能となり3枚場に揃えるなら最短でも6ターン後。そして、Ice EternalはFrost Hexが2枚設置状態なら最高火力は15点、3枚なら20点の可能性を秘めています。この場合は自分のターン6ターンに相当する可能性があるのですが、問題はFrost Hexを設置する時は自分のターンではアクションポイントをFrost Hexで消費することになる上に、アーセナルをIce Eternalで埋めてしまっているため相手のターンでの攻撃もできなくなりテンポを大きく失い続けることになります。

よって、ハミルトンは今すぐに使わないIce Eternalをピッチに回しました。しかし、そのあとFrost Hexが3枚場に出揃ったあとはハミルトンは迷わずIce Eternalをアーセナルに設置していました。まさに機会費用を予測したプレイです。

あなたがコントロールするFrostbiteは”あなたのエンドフェーズ開始時に、1点のアーケンダメージをあなたに与える。”を持つ。

このターンハミルトンはアーセナルからFyendal SpritをIce Eternalピッチでプレイ。Frost Hexをアーセナルに設置。Wounded Bullを手札に残してターン終了でした。

Frost Hexは単体では何も効果がなく、自分のターンでの設置する場合はアクションポイントを消費するためテンポロスプレイと言えます。しかし、アイスランダーの能力でアーセナル恩恵を受けたFrost Hexを相手のターン中にアーセナルに設置すれば、アクションポイント消費もなくテンポロスも最小限に抑えることができます。

上の手札だとWounded BullとFrost Hexを手札から捌こうとすると、Frost Hexをアーセナルに設置することで相手のターンでFrost Hex、次の自分のターンでWounded Bull。2ターンで捌けることになります。

しかし、もしWounded Bullをアーセナルに設置すると次の自分のターンでFrost HexかWounded Bullどちらかが1方のみが使用可能で3〜4ターンかかることになります。

結果的にはこの試合では、ハミルトンの手札には残りの2枚のFrost Hexがあっという間に揃いました。そして、第9ターンの時点では3枚のFrost Hexが場に設置し終えた状態となり、ハミルトンは2枚目の手札にきたIce Eternalをアーセナルに設置。

相手の手札が空になったターンを見計らって相手の攻撃ターンである第12にターンにIce Eternalを使用。鉄壁の防御をもつオールドハイムに一気に16点のダメージをコンボで与え、さらにWaning Moonも合わて1ターンで19点というライフを削ってしまいました。

アーセナル入れ替え

最後は、上のハミルトンのFyendal SpiritをFrost Hexと入れ替えた時のようにすでにアーセナルにカードが設置されている場合は新しくカードを入れ替えるべきかどうか?判断はどうすればいいかという「アーセナル入れ替え」について考察します。

これは、単純に既存のカードをアーセナルに維持してあとで使用した場合と、入れ替えを考えているカードのアーセナルプレイが生み出すEVの差をその都度・その瞬間比較してより高い方が理想的となると思われます。

ケース:Lava BurstからFlamecall Awakeningへ

2022年2月12日イタリアのボローニャで開催されたのPro Tour Invitationalトーナメント決勝より。スペイントップランカーのPablo Pinterが使用するFai対ブルランダーの1戦です。

状況:

使用デッキ:コンボFai

ゲーム序盤でパブロはその前のターンでアーセナルに設置したLava Burstを、すぐに次の自分のターンでレート未満使用して、Flamecall Awakeningと入れ替えました。

この時のパブロの思考について考察してみます。

Lava Burstを設置した直後に、パブロがターン終了時に引いた4枚は以下の通りでした。

相手は続くターンでWinter’s Biteレッドを使用して、パブロの手札を1枚破壊。パブロはレッドSnatchを捨てました。

対象のヒーローは{r}{r}{r}支払わなければ、カードを1枚捨てる。

Go Again

このターン相手は、既にScar for Scarの攻撃でパブロに4点ダメージを与えていたのですが、更にターンクローザーとしてWonded Bullによる8点攻撃を提示してきました。

残りの手札を温存してアーセナルのLava Burstを利用した場合、自分の攻撃ターンEVの合計は13点*となります。

*ブルーピッチでPhoenixを墓地から戻して0点攻撃で召喚。2枚目のブルーピッチで、Flamecall Awakening(EV=3)を使用。これで、山札からPhoenix(EV=2)をチューター。残りの2点のリソースでSearing Emberblade(EV=3)を使用。これでドラコニックチェーンが4つ繋がるので、Lava BurstをRupture(5)付きで使用。ターンEV合計・13点。

この時点での互いのヒーローのライフは、パブロが36に対して相手は29点でした。キャスターも筆者もてっきりパブロはダメージを受けて、13点攻撃を自分のターンで返すと思ったのですが、パブロはブルーカード2枚をブロック使用しました。これにより、パブロが出せる最大ターンサイクル(イニング)EVは8点へと減ってしまいます。

これはミスプレイなのでしょうか?EVを計算してみます。

迎えたパブロのターンでは手札にはFlamecall awakeningのみが残り、アーセナルには前の自分のターンで設置したLava Burst。装備にTunicがあるもののカウンターは次のターンまで溜まりません。この時点でのパブロの選択肢は3つです。

①Lava Burstを2点攻撃で使用。Flamecall awakeningをアーセナルに設置
②Flamecall awakeningを手札に、Lava burstをアーセナルに温存したままターン終了。
③Lava Burstで2点攻撃。Flamecall awakeningを手札に温存。

ターンEVは単純にLava Burstをプレイすれば2点。使用していなければ0点です。アーセナル理論なので、注目点はもちろんLava Burstを温存した時のアーセナル価値とFlamecall Awakeningを設置した時のアーセナル価値の比較です。

既に、Lava Burstのアーセナル価値について考察したので、Flamecall awakeningについてみてみましょう。

利点

  • アーセナル恩恵
  • 5枚手札(EV=6:1コスト)
  • カード温存(EV=4:1コスト)
  • カードドロー
  • ブラフ

欠点

  • カードプレイ限定化
  • テンポ・ロス
  • ダブルテンポロス
  • アーセナル事故
  • アーセナル渋滞?

欠点はLava Burstと同様なのですが、この時の状況ではFlamecall Awakeningはこのターン使用できないのでテンポ・ロスはカウントされません。よって、アーセナル渋滞以外は欠点はなしとなります。そして、このターン使用不可能なカードなのでアーセナルに設置することでカードドロー利点を得られます。

カード温存に関しては、純粋に使用した時のEVとなりますがチューターしたフェニックスは0〜3点のEVの追加価値を持つことになります。3点は、5枚手札のコンボターンでこの場合は1コスト、6点の価値と考えることができます。

コンボターン以外だと、Phoenix Flameの価値は1~2点ですが相手が妨害を得意とするアイスランダーなので平均的にみて1点と考えるのが妥当ではないかと個人的に考えます。この場合は、1コスト、4点の価値でレート未満のカードとなります。

ただし、今回の状況ではPabloは次の自分のターンでチューニックカウンターが溜まるのでそこも計算に入れたとすると、この時点でのFlamecall Awakeningのアーセナル入れ替えとLava Burstアーセナル維持のEVの差が見えてきます。

「5枚手札」はファイマスターがYoutubeで説明していたのですがArt of WarのターンにあえてFlamecall AwakeningをAoWより前に発動させて手札にチューターしたフェニックスをAoWの追放対象に指定することで+1点分のEVが得られます(詳細が気になる方はこちらで)。

Lava Burst維持Flamecall awakeningアーセナル入替
ターンEV02
カード温存54 (1コスト)
カードドローx+1 (平均EV3)
合計EV59 (1コスト)

こうして見ると、Lava Burstの入替がありなのがわかりますね。

しかも、前のターンでブルカード2枚をブロックをしているのでFlamecall Awakeningアーセナル入れ替えでパブロはイニング・ターンサイクルEV自体は8点ですがアーセナルに置いたカードの可能性を入れると15点の選択をしたことになります。

これと比較して、手札を攻撃用に温存してアーセナルにあったLava Burstもこのターン使用していた場合のEVは13点、そしてアーセナルは空になっていることに。

つまり、今後Flamecall awakeningを予定通りに使用できれば、このターンサイクルでパブロが下した判断は最大のEVをうみ出す計算に。トッププレイヤーはここまで計算しているのか…

感想

ゲーム開始当初から、アーセナルゾーン使用はゲームの重要な要素ということは理解していたつもりですが、今回、考察してみるとその奥深さに驚かされました。たった1枚カードをターン終了時に設置するか・しないかがここまでゲーム全体の戦略に大きな影響力を持っているとは。

ゲームを始めたばかりの当初は、とりあえずアーセナルにカードを設置したり、最近でも使用するヒーローのクラスを変える度にアーセナル向きのカードを理解せずにダブルテンポロスのミスプレイを連発したり。つい先日、プレリリースでレンジャークラスに挑戦してみれば、対戦相手は常にアーセナルが埋まっているのになぜかこちらはアーセナル空き時間の方が長かったり… 色々学ぶことがありそうです。

毎度のことですがFaBがスキル重視のゲームというは、こういう細部の構造一つ一つにプレイヤーの磨かれたススキるが反映されていくからなのではないでしょうか?